福島原発被災後の生涯に渡る放射能汚染と健康影響【論文】
安藤 満
東日本大震災(マグニチュードMw: 9.0、2011年3月11日)が起こってから4年が経過しているが、大震災の津波により現在に至るまで東京電力福島原発に深刻な破壊が起こっている。原発事故による放射性核種の大量放出により、原子力発電所近辺の大気、土壌、陸水等の環境さらに太平洋の海洋も、ヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134、ストロンチウム-90、トリチウム等各種放射性物質によって著しく汚染されている。既に原発から大気中に放出された放射能汚染の湿性沈着や乾性沈着、さらに汚染水流出によって、環境と食品が汚染されている。
原発周辺の土壌は高度の放射性物質汚染に曝され、事故後日本の広い範囲が汚染され、原発から離れた大気・水中に低濃度の放射性物質が検出されている。
現在、原発事故により汚染地域から福島県内外へ11 万5511人の人々が避難している。
放射能汚染への怖れから双葉町、大熊町、富岡町、浪江町、飯舘村、南相馬市等被災地から多数の人が原発から離れた非汚染地域へ避難している。
感受性の高いヒトの健康への深刻なリスクとして放射線や放射性物質は多種の固形がんや非固形がんの白血病(白血球のがん)の原因であることが知られている。
がん発症やがん死亡率に関する最も重要な疫学資料は、広島・長崎の原爆被爆生存者の生涯に渡る追跡調査(LSS)である。さらに最近の研究はチェルノブイリ原発事故による放射線と放射性物質に高濃度曝露を受けた60万人以上のチェルノブイリ原発作業員の白血病発生率が倍加していることを報告している。
もったいない学会WEB学会誌 Volume 7, pp. 25-63
放射線被曝量と白血病発生率・死亡率や固形がん発生率・死亡率の間には直線的関係があると報告されている。
福島の放射能汚染地域には多くの乳幼児、児童、母親が居住しているため、生涯に渡る継続的健康診断と治療の徹底が必須である。
投稿者: | 安藤 満 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2015年6月29日 |
公開日: 2015年6月29日
少子高齢化社会における地域経営の連携デザインに関する考察【論文】
鈴木 秀顕
近年の過疎地域を筆頭とする地域人口の減少により、労働人口減少に伴う産業力低下、及び社会保障の制度維持に関する問題が取り上げられている。
しかし、これら問題は、労働集約的都市化が引き起こしたものであり、付加価値の継続的創出、及び市場を中心とした循環モデルが前提となっている。
そのため、現在の過疎対策は、中央政府に集約された租税を、認定された地域に還流することで問題解決しようとする形になっている。
しかしながら、昭和45年(1970年)から始まったその対策以降も過疎地域は再生せず増加の一途である。一方で、その間の社会環境は変化してきており、1997年9.2%だったインターネット人口普及率が2013年には82.8%と全体の8割を超える人が使用するほど、ICT環境が整いつつある状況にある。
この変化は、サービス概念に影響を与えることになるが、伴う過疎に関する課題の変化が捉えられていないことが懸念される。
それは、労働集約的形態で成立してきた今までの社会にとって、人口減少が産業維持を困難にしてきた形であったものが、その人口減少の状態においてサービス形態を変化させることにより補う形への変化である。
つまり、人口減少を軸足とした過疎対策からの変換である。
しかし、その人口減少の影響を軽減する形は、地域規模によってそのフォロー領域は相違しており、継続的にフォローできる形を構築することが必要になってくる。
また、地域コンテンツを精査することによりフォロー領域を明らかにする必要性がある。それらの課題について検証するとともに、地域コンテンツの連携モデルを基とした新たな過疎再生モデルを考察する。
投稿者: | 鈴木 秀顕 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2015年6月18日 |
公開日: 2015年6月18日
地球温暖化対策不要が貿易立国日本生き残り途【論文】
平田 賢太郎
人為起源の CO2の大量排出による地球温暖化が今世紀末の地球に大きな恐怖を与えると、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は主張する。
しかし、その前に、CO2を排出する化石燃料が枯渇(ここで、化石燃料の枯渇とは、経済的に採掘可能な埋蔵量が少なくなることを指す)する。
この化石燃料の枯渇こそが現代文明社会の恐怖となり、その時に真っ先に破綻をきたすのが日本経済である。
いま、日本経済にとって、国民に経済的な負担をかけるとして、大きな社会問題になっている再生可能エネルギー(再エネ)の固定価格買取制度(FIT 制度)を使って、CO2の排出削減に無駄なお金を使う余裕はない。
3.11 福島過酷事故後の世論の多数を占める脱原発の要望を満たすためにも、現状で、CO2は排出するが、最も安価で安定供給が保証される石炭火力が、当面、原発代替として利用されるべきである(久保田、2012)。
いずれ、化石燃料が枯渇に近づき、その輸入価格が高くなり、化石燃料の代替として、再エネを利用する方が経済的に有利になった時に、はじめて、安価な再エネの種類を選んで、順次、使用して行くべきである。
これが、いま、貿易赤字と財政赤字に苦しむ日本経済にとっての生き残る途でなければならない。
投稿者: | 平田 賢太郎 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2015年4月20日 |
公開日: 2015年4月20日
福島第一原子力発電所事故による放射線量の計測と分析【論文】
石川 宏
7 年前から東京都日野市の自宅にガイガーカウンタを設置し放射線量を計測し、そのデータを「ナチュラル研究所」のホームページ(1)にリアルタイムで表示をしていたところ、今回の福島第一原子力発電所事故で、日野市にも放射性物質が飛来し、異常データをキャッチした。多くのかたがこのホームページをご覧になり、思わぬ反響があったので、その顛末を報告する(2)。
またその後も計測を続け、長期間の変化をフーリエフィルタで抽出すると、遠隔地でありながら現地の様子をかなり詳細に読み取ることが出来る。さらに非線形最小自乗法で分析することにより、従来ガイガーカウンタで不可能とされていた放射性物質(核種)ごとの放射線量を求めることができることを示す。
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
License: | Freeware |
日付: | 2013年2月14日 |
公開日: 2013年2月14日
低エネルギー社会のイメージとスイス社会【研究ノート】
大久保 泰邦
スイスは一人当たりの GDP が日本以上で、裕福な国である。
スイスのカントンは、それぞれ人間集団の基本生活を営むための要素を有すバイオリージョンとなっている。
スイス成立は、自立したカントンが一つ一つスイス連邦に加盟していったことによるもので、その意味でスイスは真の連邦国である。
自立したカントンの社会を見ると、低エネルギー社会に必要な要素がたくさん見られる。
それは、
(1)地元の地勢を生かしたエネルギー生産、(2)小都市とその周辺の農業地域、(3)地元の特産品、(4)放牧、木材生産ができる山地、(5)畜産と作物農業の一体化、(6)都市内には太陽光や風などの自然エネルギーを有効利用できる低層ビルと住宅、(7)都市内には路面電車と自転車道路が完備、(8)輸送、移動のための隣の地域につながる鉄道、(9)機械による大量生産でなく、人手による小規模生産、である。最後にもっとも重要な要素は、(10)自分の周りの問題は、自分で考え、自分で解決する自立心である。
スイス人にはこの自立心がある。そのためエネルギーや食料をなんとか自給しようと努力する。
スイスは穀物栽培の適地が少なく、輸入せざるを得なかった。昔、外貨を稼ぐ産業が無かった時代、他国のために戦う傭兵が産業となった。自分の血で食料を確保したのである。この歴史がスイス人の自立心を育んだ。
スイスでは農民と工業労働者が混合した形態をとったため、小規模工場が多数発生し、大量生産ではなく高度な技術による手作りの工業が発展した。
一人当たりの二酸化炭素排出量は日本の約半分で、少ない石油消費で大きな収入を得る工業生産をしている。
スイスは一次エネルギーの確保が難しくなっても、現在の生活を維持できるであろう。スイスを参考に、これからの日本の低エネルギー社会を考えて行く必要がある。日本では江戸時代の藩がバイオリージョンであった。
しかしそれは幕府によって強制的に作られたものであり、スイスの市民の意思で作り出したバイオリージョンと異なる。
日本の歴史を振り返ると、自給自足ができるバイオリージョンを作ることは難しいといえる。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2012年11月12日 |
公開日: 2012年11月12日
福島原発事故による放射性物質汚染と被曝影響予測【論文】
安藤 満
2011 年 3 月 11 日東北地方太平洋沖地震(マグニチュード Mw: 9.0)の津波による震災が起こってから、現在 15 ヶ月過ぎている。それ以降東京電力福島第 1 原子力発電所に、重大な破壊が引き起こされている。震災以来原子力発電所(原発)近辺の大気、土壌、陸水、海水環境がヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134 等の放射性物質によって著しく汚染されている。原発から放出された放射能汚染の湿性沈着と乾性沈着によって、環境と食品が汚染されている。
原発周辺の土壌は高度の放射性物質汚染に曝され、事故後日本の広い範囲が汚染され、原発から 170 km 離れたつくば市の大気中に低濃度の放射性物質が検出された。
現在、原発事故により汚染地域から約 16 万人の人々が避難している。
放射能汚染への怖れから、多数の人々が原発から離れた非汚染地域へ逃避している。
放射線や放射性物質は多種のがんやある種の白血病(白血球のがん)の原因であることが知られている。
がん発症やがん死亡率に関する最も重要な疫学資料は、広島・長崎の原爆投下被爆生存者の生涯に渡る追跡調査である。
さらに最近の研究は、チェルノブイリ原発事故による放射線と放射性物質に高濃度曝露を受けた 60 万人以上のチェルノブイリ原発作業員の白血病発生率が、倍加していることを報告している。
将来に渡り多数の乳幼児、児童、母親が高い放射性汚染物質の地域に住むことになるため、健康診断の徹底が必要である。
投稿者: | 安藤 満 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2012年7月10日 |
公開日: 2012年7月10日
エネルギー収支分析による社会の持続性評価【論文】
鎗谷 浩明・松島 潤
本研究ではエネルギーの質を測る指標であるエネルギー収支比(EROI)を用いて、日本社会の持続性についての包括的な分析を行った。
まず、エネルギーの質・量の双方から現在の日本のエネルギー事情を捉えるため、各種エネルギーの供給量と EROI を求め、グラフを作成した。その結果、日本全体における EROI の値は年々減少する傾向が確認され、また化石燃料に代わるエネルギーとして期待されている各種再生可能エネルギーが、供給量・EROI 共に化石燃料と比べて低い値を示していることがわかった。
次に、社会が持続するために必要な最小 EROI を求めた。
本研究では、運輸システムを維持することが社会の持続のための最低条件であると考え、原油の燃料としての使用過程まで考慮に入れたEROI が1以上であれば、運輸システムは成立し、社会の持続性は保たれるとした。
以上の仮定を置いて計算を行った結果、社会の持続に必要な最小 EROI は 1.4 と導かれた。
つまり、EROI が 1.4 を下回ると、運輸システムが担保されないために、社会活動は確実に成り立たない。
ただし、この値を超えれば現在の社会活動が維持できる十分条件を意味せず、石油を運輸システム維持だけに使い、それ以外の自国内消費には全く使わない社会を意味し、エネルギー収支の観点から社会の持続性を確保できる最低必要条件を定量的に評価する指標の一つとして考えられる。
投稿者: | 鎗谷 浩明・松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
License: | Freeware |
日付: | 2012年4月23日 |
公開日: 2012年4月23日
原油高騰が社会へ及ぼす影響に関する調査研究【論文】
鎗谷 浩明・松島 潤
本研究では、過去に起こった第一次・第二次石油危機と 2000 年代の原油価格高騰によって社会にもたらされた影響について、新聞記事・統計データの分析を行い調査した。
その結果、第一次・第二次石油危機と、2000 年代の原油価格高騰時とでは社会に与えた影響に違いがみられた。
第一次・第二次石油危機時においては、中東による争乱が引き金になったこともあり、石油需給の危惧から石油消費量の削減を命題とした対策がとられている。
原油価格の高騰は製品価格にも転嫁されており、第一次・第二次石油危機時ともにスタグフレーションの傾向がみられた。
一方、2000 年代においては、石油需給に対する危惧は薄く、消費量削減を推進する動きは見られなかったものの、原油価格の高騰が長期
にわたり、また製品価格にはほとんど価格転嫁されなかったため、生産者に多大な影響をもたらした。
この価格転嫁の様子は日本に特に顕著な結果であった。
投稿者: | 鎗谷 浩明・松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2011年11月16日 |
公開日: 2011年11月6日
福島原発暴走事故による放射能汚染 -受忍するか、選択するか、それとも逃避するか-【論文】
安藤 満
2011 年 3 月 11 日、東北地方太平洋岸地震(マグニチュード 9.0)と津波が東京電力福島第 1 原子力発電所に重大な破壊を引き起こした。
原子力発電所(原発)近辺の大気、土壌、陸水、海水環境がヨウ素‐131、セシウム‐137、セシウム‐134 等の放射性物質によって著しく汚染された。
原発から放出された放射能汚染の湿性沈着と乾性沈着によって、数種の農産物と海産物が汚染されている。
震災後 10週間を過ぎた時点で、土壌中濃度が 1.48 megaBq/m2以上の汚染を示す地域の面積は約 600km2 に上る。原発から 170 km 離れたつくば市の大気中に、低濃度の放射性物質が検出された。
汚染地域から約 8 万人の人々が強制避難させられている。
放射能汚染への怖れから、多数の人々が原発の無い非汚染地域へ逃避している。
多数の乳幼児、児童、母親が高い放射性汚染物質の地域に住んでいるため、生活環境から沈着した放射性物質の除染に取り組む必要がある。
投稿者: | 安藤 満 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2011年6月29日 |
公開日: 2011年6月29日
廃食油からのバイオディーゼル燃料生成のエネルギー収支分析【論文】
黒原 大輔・松島 潤
2000年代後半の原油高騰を背景に、また循環型社会構築に向けて、自動車の燃料としてバイオ燃料を使用することが注目されている。
この流れの一環として、廃食油をリサイクルすることによりBDFを取り出し、自動車燃料として使用する取り組みが自治体等で行われている。
本研究では、このBDFのエネルギー収支分析を行い、それぞれ4.9、5.7という結果を得、他のバイオ燃料と比較した結果、有効なエネルギー源であることがわかった。
また、この研究の家庭でBDFの生成にどれだけのエネルギー投入が必要であるかが明らかとなり、これを元にBDFのさらなる効率的利用への提言を行った。
投稿者: | 黒原 大輔・松島 潤 |
Platforms: | Windows 8 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
License: | Freeware |
日付: | 2015年5月4日 |
公開日: 2010年11月2日
マイクロ水力発電のエネルギー収支分析【論文】
岩崎 裕・松島 潤
新エネルギーには、太陽光発電、太陽熱発電、雪氷熱発電、バイオマス、地熱発電、風力発電、マイクロ水力発電などがあり、エネルギー現の多角化が図られている。
しかし、新エネルギーは大半が太陽や風力などの自然エネルギーであり、これらはエネルギー密度が低いため、石油に替わるエネルギー源に成り得ないという考え方も存在する。
そこで、新エネルギーの”質”について分析を行い、既存のエネルギーとの定量的な比較を行うことで、新エネルギーの代替可能性について検討する必要がある。
エネルギーの”質”を評価するための科学的アプローチとして、エネルギー収支分析がある。エネルギー終始分析とはEPR(Energy Profit Raito:エネルギー収支比)を求め、その値をもってエネルギーの”質”を評価していく分析方法である。
最近注目されている新エネルギーの1つにマイクロ水力発電があるが、エネルギー収支分析はまだ行われていない。
そこで実際に稼働しているマイクロ水力発電を視察・調査し、エネルギー収支分析を行った。
その結果、発電が十分にできるほどの水量や落差の確保が容易である地点におけるマイクロ水力発電はEPRが高く、エネルギーの”質”の観点では有望な発電システムであると結論付けた。
ただし、蓄電池を導入するとEPRが低下してしまうため、例えば夜間発生するエネルギーは蓄電池に蓄えるより捨てたほうが効率的であると解釈できる。
また、今回の評価対策は商業的に操業していない場合であることも、評価結果を解釈する場合に注意を要する。
投稿者: | 岩崎 裕・松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月31日 |
公開日: 2010年8月31日
石油ピークに対する世界の対応と日本【論文】
大久保 泰邦
石油生産の状況を見ると、石油ピークは到来しつつあると考えられる。
欧米や中国は石油生産の豊富な経験から石油ピークを実感し、石油ピーク後の世界を想定して国家政策、企業経営を進めている。
しかし、日本は石油生産の経験に乏しく、石油ピークを意識した制作、企業経営となっていない。
米国は、広大な土地を使って、不毛の地からエネルギーを生産し、既存産業から新産業へ転換を試み、世界の覇権を維持しようとしている。
欧州は、多様な国家群の特徴を生かして、相互補完体制を築き、エネルギーの相互依存、基礎科学における知財と施設を共有化し、新たな国際競走に勝ち抜く社会に変貌しようとしている。
中国は、国内の巨大市場をベースにエネルギー・資源の余裕がある間に新しい中国を作り、石油ピーク後は原子力発電を行い、資源を持つもの作り国家として世界に君臨しようとしている。
一方、日本の政府は国際の場での主導権を獲得することに主眼を置き、マスコミは商業主義に陥りメジャーな見解だけで多様な見解を提示せず、学者・研究者はハイテクでエネルギー問題を解決できると思い、政策立案者は石油ピークの恐ろしさを理解していない。
自然エネルギーの開発や省エネルギーという科学政策は一見どの国も同じように見えるが、欧米や中国が目指すゴールは、石油ピーク後の社会づくりである。
石油ピークの影響の大きさと、それに対する対策の手薄さを考えると、日本は崩壊する可能性すらある。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月16日 |
公開日: 2010年8月16日
石油文明が終る、日本はどう備える【論文】
石井 吉徳(故人)
エネルギーが文明を支える。
Net Energyなしには文明は損しないからで、その評価はEPRが分かり易い。
今の石油文明は安く豊かな石油なしに存在しないが、その基が減耗しつつある、それが石油ピークという。
だがなんとかなると思う日本、石油後の未来戦略がないが、これはあたかも太平洋戦争当時、神風が吹くとまさに神頼みした日本を彷彿する。
民族の性向、本質は変わらないようである。
また失敗しないためが本論である。
先ず「地球は有限、資源は室が全て」を理解する、2005年ころから原油の生産は頭打ちである、
その後起伏はあるが基本的にプラトーである。変動は経済とリンクするからだが、これがピークの姿と考えるが、いずれ急峻な下り坂に向かうとみられる。
期待の新地域、大水深など話題は多いが、「質」はとみに劣化している。
メキシコ湾の事件などは典型、石油ピークの証左なのである。
これも資源の質の問題、技術でなんとかなる、と言うことではない。
技術とは、自然の恵み利用の仕方である、資源を創るものではない。
本論は、石油ピーク、エネルギー源の質を説明し、脱石油文明に備える「日本のプラン B」10項目を論ずるものである。
大陸でない日本だが、世界6位の海岸線長をもつ。
日本の地勢を理解し自然との共存する、が戦略の要である。
地域分散がその要諦である。
この至高は島国のアジア諸国の参考となると思われる。
戦略の基本は、経済成長を正義と思わないことである。浪費しない、もったいないで、心の豊かさを求める、GDPよりGDHと、低エネルギー社会を目指すことである。
投稿者: | 石井 吉徳 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月16日 |
公開日: 2010年8月16日
エネルギー収支比的視点がなぜ重要なのか — EPRの社会科学的アプローチ —【論文】
松島 潤
本稿では、まず起源の観点からLCA(ライフサイクルアセスメント)とEPR(エネルギー収支比)の違いについて比較し、EPRは生物存続に係る最も素朴な点に着目している点が重要であることを述べる。
続いて、EPRを用いた社会シミュレーションにより、米国のエネルギー事情を予測した例を紹介し、EPRが単なるエネルギー指標ではなく、社会とエネルギーの関係を包括的に把握できる側面を有している点について述べる。
来るべき低エネルギー社会は、自由裁量エネルギーの減少を意味し、そのメカニズムとしてエネルギー高騰に伴う物価高騰と需要減退に伴う景気後退(すなわちスタグフレーション)を指摘する。
さらに、1970年代に起こった2回の石油ショック時における日米両国の経済的反応についても統計データを用いた比較考察を行う。
最後に、エネルギー輸入国でのEPRの考え方へ概念的に拡張することにより、日本における特有な問題を指摘する。
投稿者: | 松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年5月28日 |
公開日: 2010年5月28日
エネルギー収支比的視点がなぜ重要なのか — EPRの定義と意義の再検討 —【解説】
松島 潤
本稿は、EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー収支比)の定義を再検討することで、その意義を明確化することによりEPRの適切な適用を促すことを目的としている。
人間の行為を「余剰エネルギーを生産する行為」とに便宜的に分けると、EPRの本来的な適用範囲は前者である。
従って、人工物の製造や利用については、「余剰エネルギーを消費する行為」に分類され、このような場合は、EPRではなく熱効率などの効率指標を用いるべきであろう。
また、EPRの社会的な重要性として、EPR低下が高インフレ率と景気後退(スタグフレーション)をもたらし、我々の社会に深刻な影響を与えうることを示した。
投稿者: | 松島 潤 |
Category: | 解説(WEB学会誌) |
日付: | 2012年2月22日 |
公開日: 2010年2月22日
運輸部門の石油消費低減に関する一考察【研究ノート】
中田 雅彦
有限な地球の資源を安価に利用できる限界に近づいている。
特に石油資源がそうである。
安価な石油で成り立っている現在の高エネルギー消費社会を低エネルギー社会に早急に構築しなおさなければならない。
ここでは、国内石油消費の約35%を占める運輸部門において、石油消費量と石油依存度を低減する可能性について考察する。対象とする時間枠は2030年とした。
産業部門において具体的な石油消費低減策を検討するためには、先ず将来の絵S基油供給をおおよその精度でもよいから予測することが必要になる。
そこで、入手可能な情報に基づき短中期の供給予測を試みた。
その結果、2−3年後に石油供給不足が発生し、2020年頃には石油生産ピークが発生する可能性が高いと判断された。
2030年には、世界の石油と石油相当の液体燃料は現在の2/3程度に減少すると予測された。
上記の石油供予測に基づき、運輸部門の石油消費低減策を検討した。
石油に替わる得る適切な液体燃料候補は現時点で存在しないので、運輸部門で今までに広く用いられてきた駆動源としての新しい組み合わせに変更して行かねばならないことになる。
すなわち、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、蓄電池電気自動車などの「電気駆動自動車」である。
しかし、液体燃料を完全に電気に置き換えるには、キマの蓄電池の数十倍の能力を持つ高性能蓄電池が必要であり、その開発のためにはまだ相当な年月がかかると言われている。
したがって、当分の間は、蓄電池の性能不足を補うために、この新しい駆動源を新しい交通システムと組み合わせることが必要になろう。
この新駆動源と新交通システムの組み合わせは2030年頃には、努力すれば実現化する可能性はある。しかしながら、数年先に発生すると予測されている石油供給不足には間に合わない。そこで、短期的に燃料消費を低減できる手法をいくつか提案する。
これらの短気、長期対策を併用することと、原子力発電の増強により、目標とする石油消費量を低減する可能性はあるが、官産民の強い意志と連携、努力が必要である。
投稿者: | 中田 雅彦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2015年5月4日 |
公開日: 2010年2月22日
石油ピーク後の食料事情【研究ノート】
Antony F.F. Boys
先進工業国は、エネルギーの総消費量の13〜18%を食料生産と消費に向けている。
このエネルギー消費の主な要素は機械類、燃料、化学製品(化学肥料や農薬)、輸送、食品加工、包装、販売と厨房関係などである。
これらの国々では、食料1カロリーを口に入れるために10カロリー程度の化石資源を消費している。
「石油ピーク」という言葉で象徴される今後の化石資源の入手困難な事態は、世界の人口の食料供給に対する大きな脅威である。
この文章の最後で、その脅威への対策を提案する。
投稿者: | Antony F.F. Boys |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2010年10月22日 |
公開日: 2010年2月22日
石油ピークって何?【研究ノート】
大久保 泰邦
石油ピークとは?
石油ピークとは、石油の生産のピークのことです。
一度増えた石油の生産は、やがてピークを迎え、必ず減退します。なぜなら石油は有限だからです。石油の枯渇とは生産量がゼロになることですから、石油ピークは枯渇のずっとまえに訪れることになります。
石油ピークが来ると何が起こる?
石油生産の歴史は世界の歴史そのものであり、石油ピークが到来すると、経済の混乱が起き、戦争が起きるという、この繰り返しになっています。
石油ピークはいつごろか?
石油生産量は伸び続け、1980年代半ばに発見料を上回りました。
すなわち、残っている石油の量、残存埋蔵量はそれ以来、年々少なくなっています。
ボーリングの世界最高深度は8850mであります。もうすでに8000mの深さまで掘り尽くしているのです。今後巨大油田をいくつも発見できる可能性は小さいと言えます。現在利用できるデータから考えると石油ピークは遅くとも2020年、早ければ2010年には到来します。
石油がなくなるとなぜ困るの?
我々の周りには石油製品で溢れかえり、石油で動いています。
なぜなら石油は大変便利なもので、素晴らしい力を秘めているからです。それを毎年プール250万杯分も使ってもまだまだあり、、おまけに安いのです。
この便利な資源に変わるものは残念ながらありません。無くなれば、大変なことが起こることが容易に想像できます。
なぜ石油ピークが出来るのか?
石油は一箇所蛇口を開ければ全部の石油が出てくるようなタンクのようなところにあるわけではなく、地中の地層の中に浸み込んで存在しているのです。
石油は地層の圧力でもって雑巾を絞るように押し出されます。しかし圧力が低下すれば、押し出される量も減少します。そこで生産量を一定に保とうとするのでありますが、それに反して時間とともに油層全体の圧力低下が起こり、生産ピークが出来上がります。
石油はどこからやって来たのでしょうか?
石油は海に溜まった生物の紫外から生まれました。
植物プランクトンは、太陽によって光合成をし、二酸化炭素を高エネルギーの糖質に変化させました。プランクトンの死骸は、海の浅いところで醸成され石油となるのです。
石油は適度な温度と圧力があってゆっくりと醸成されます。
石油が逃げ出さないように、蓄えるお椀をかぶせたような背斜構造とキャップロックという不透水性の地層がその上を覆うといった地質構造も必要であります。
世界の残存確認埋蔵量のうち、60%以上を中東が占めています。
なぜなら中東はこの条件にぴったりだったからです。
資源エネルギー制約が全てを支配する
資源エネルギーが制約する社会とは、資源エネルギーの量が制約されており、そのため、生産量、消費量、排気量の全てを制約するものです。
石油ピークはこの資源エネルギー制約の一つですから、我々の現代社会の全てを制約します。
石油ピークへの対策は現代が抱える全ての課題を克服できる
石油ピークを理解すると、金融資本主義の崩壊、地球温暖化、人口爆発、南北格差、テロ国家の出現、人材の流動化などの世界の課題の意味を理解することができます。
石油ピークを克服する対策を議論しましょう。
そうすれば世界が今抱えている課題の解決策は自動的に思い浮かぶのです。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2010年10月22日 |
公開日: 2010年2月22日
「低エネルギー社会に向けて」【特集号・巻頭言】
大久保 泰邦
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Platforms: | Windows 8 |
Category: | 特集号(WEB学会誌) |
License: | Freeware |
日付: | 2010年10月22日 |
公開日: 2010年2月22日
太陽熱利用住宅のEPR評価【論文】
石川 宏
【論文】
家庭部門におけるエネルギー消費は、給湯30%と暖房22%で全体の半分を占め、この分野の省エネルギー化が求められる。
住宅の省エネルギー化にはさまざまなものがあるが、太陽の熱エネルギーを直接取り込み、暖房と給湯に用いるパッシブソーラーシステムがある。OMソーラシステムとして商品化されており、報告書には2002年に導入し、5年間のエネルギー消費、温度変化などについて統計データをとることができたので報告する。
加えてそのデータを用い、エネルギー収支の評価(EPR評価)を行った。
その結果、OMソーラシステムはエネルギー収支の良い住宅方式であるとの評価が得られた。
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2009年9月15日 |
【正誤表】
正誤表
16ページ左、下から3行目
誤:それによると、(C)は年間 106MJ である。したがって(A)は 106 - 69MJ となる。
正:それによると、(C)は年間 106GJ である。したがって(A)は 106 - 69GJ となる。
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2009年11月9日 |
【注釈】
OM ソーラーの「OM」とは、「おもしろい、もったいない」のこと。
OM ソーラー は、太陽エネルギーを電気に変換して使うのではなく、太陽の熱をそのまま使 うことを原理とした太陽エネルギー利用システム。
OM ソーラー株式会社ホームページより http://omsolar.jp/index.html
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2011年4月29日 |
公開日: 2009年9月15日(正誤表掲示:2009年11月9日、注釈掲示:2011年4月29日)