尚業千、菅井径世、小川克郎
最近「もったいない学会」で赤祖父先生の学説を中心とした地球温暖化の議論が若干なされています。
私たちのグループではNASA/GISS気温データベースを用いて過去100年の地球気温変化の解析をここ2年ほど行ってきました。
最近ようやく結論が見えてきたので、本学会の主旨とは若干それているかとも思いますが、その要約を本学会で速報としてご報告させて頂きます。
私たちの研究は、昨年のIPCCの結論の科学的な過誤を結果として明らかにしていると考えます。
また逆に、赤祖父先生お考えを補強することになるのではないかと感じています。
即ち、赤祖父先生とはアプローチの仕方は違いますが、二酸化炭素の継続的排出にもかかわらず現在及び近将来の地球気温は温暖化ではなくむしろ僅かながら寒冷化するなどという点では恐らく同じような結論になっているのではないかと思います。
なお、この報告書は論文として国際誌への投稿を予定しており、その中で手法については述べるつもりです。
投稿者: | 尚業千、菅井径世、小川克郎 |
Platforms: | Windows 8 |
Category: | 速報(WEB学会誌) |
日付: | 2009年7月2日 |
公開日: 2009年7月2日
後藤 敏晴、天野 治、岡島 いづみ、佐古 猛
近年になって持続可能な社会を形成する必要性が強く認識されるようになった。
製造メーカにとっても環境や資源枯渇というキーワードが重要な世の中になってくる。
一方で、メーカが創りだす新しい環境技術を正しく評価しなければ、誤った方向に技術開発を進めてしまう可能性がある。環境面のみならず人材資源の面からも、もったいない結果を招きかねない。
エネルギーは依然として石油資源に頼る割合が高い。
その石油資源は有限である。したがって次々に新しく創造される技術はエネルギーを制約できるかどうか正しく評価したうえで社会に普及している必要がある。
そこで、本稿ではエネルギーの質の評価に用いられるEPR(Enagy Profit Ratio)の概念を用いて、一般的な製造業におけるプロセスの質を評価する方法を提案する。
EPRの概念を用いれば、新しい技術を導入したり既存のプロセスに変更を加える際、エネルギー使用効率がどのように変化したのかを定量化することが可能になる。
また、どのような工程に着目してプロセスを改善していけばいいのかを明確にすることができる。
投稿者: | 後藤 敏晴、天野 治、岡島 いづみ、佐古 猛 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2009年5月23日 |
公開日: 2009年5月23日
山本 達也
「ガザ報道」について思うこと
何ともイヤな年明けとなってしまった。昨年来注視していたガザをめぐる動向のことである。年が明けて、イスラエル軍は地上分の投入に踏み切った。
国連も、周辺諸国も、アメリカも、フランスも、そして国際社会全体が無力な姿をさらけ出してしまっている。
とかく国際ニュースは疎いと揶揄されがちな日本のメディアも、今回の事件についてはほぼ毎日にのように報道している。私自身、中等やイスラーム国の政治や国際関係に関心を持つ研究者の一人として、こうした報道に耳を傾けているのであるが、ある種の違和感を覚えることも多い。
これは、もったいない学会に数多くいらっしゃるエネルギー問題の専門家の方々が、資源やエネルギー問題に関する日本の報道に接する際に感じるある種の違和感やフラストレーションと同じような種類のものではないかとも思う。
投稿者: | 山本 達也 |
Category: | コラム(WEB学会誌) |
日付: | 2009年2月20日 |
公開日: 2009年2月20日
大久保 泰邦
大谷氏の「ひと夏の経験」と題したコラムは、ハイテクで溢れかえる都市は高品質のエネルギーによって支えられており、エネルギーのEPR(エネルギー収支比)が減衰する、すなわちエネルギーの質が低下するとともに衰退する危険性がある、との私的である。
大谷氏が当学会WEBPAGE学会誌にて発表された「おいそれと帰農できない理由について」(2007)では、農業は人間が必要とするエネルギーを生産することであり、都市を維持するエネルギー量に比べれば、遥かに小さいために、収益が低いことを指摘した。
現代の石油文明は、食料以外に多くの生産物を生み出し、最低限のエネルギーを生産するだけでなく、豊かさを生み出している。我々が労働で消費するエネルギーに加えて、石油などのエネルギーが加わり、生産物を出力しているのであるという、鋭い指摘である。
これに関して大谷氏は、「エネルギー収支比」の父であるCharles Hallに触発されてKurt CobbがEnergy Bulletinに掲載した「The net energy cliff」の論文を私に紹介された。
この論文は、エネルギーの質を表すエネルギー収支比(この論文の中ではEROI(Energy Return on Investment)と読んでいる)と社会に貢献するネットのエネルギーの関係の主張は説得力がある。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | コラム(WEB学会誌) |
日付: | 2008年12月26日 |
公開日: 2008年12月26日
~EPRと経済の関係が示唆する現代文明の翳り~
大谷正幸
ここ数年上昇基調だったWTI原油価格は2008年2月ついに1バレル100ドルを越え、世界中で酪農・漁業・運輸業関係者をはじめ人々の悲痛な叫び声が沸き起こった。
そして、7月には1バレル147ドルを記録した。
ここ数年の原油価格の推移は投機対象になってしまうほどの高い上昇率を示していたが、実態経験の根幹を揺るがすに十分な水準に達したのであった。というのは、1エネルギー単位の食料が食卓に上るまでに10エネルギー単位を使っている現代の食料供給システムでは、エネルギー単価のとして比較した化石燃料価格が食料品価格の10分の1以下の水準でなければ、採算面で支障が生じるからだ。1バレル147ドルとは、食料供給システムの粗利益をおよそエネルギー・コストだけでかき消してしまうほどの水準であったのだ。
投稿者: | 大谷正幸 |
Category: | コラム(WEB学会誌) |
日付: | 2008年12月11日 |
公開日: 2008年12月11日
芦田 讓
「もったいない理念」の普及も必要だが、その実践が重要である。
実践の拠点として、NPO法人環境・エネルギー・農林業ネットワーク(EEFA)を設立した。さらに、実践の場としてマダガスカル共和国、ガーナ共和国、マーシャル諸島共和国への支援を行っている。しかし、自立が大切であるから、「最初の支援は行うが、フォローは現地の人々で行ってもらう」ことを我々の基本姿勢としている。
国内では、地域に密着した実践的活動を実施している。
マダガスカル共和国では、マダガスカルの大統領府の招聘により、Madagascar Action Planへの支援・援助のための現地視察を行い、支援計画策定の基礎資料の収集、FSのためのパイロットサイトの選定を行った。
ガーナ共和国では、再生可能エネルギーによる電力で地下水や河川水を汲み上げて灌漑用水として利用したり、逆浸透膜によって浄化して飲料水とするなどの活動を計画している。マーシャル諸島共和国では、太陽光と風力の再生可能エネルギーによってこの装置を稼働させ、海水の淡水化する提案を行った。国内での地域に密着した実践的活動では、京都府南丹市において食料とエネルギーの自給自足の実践を試みている。
石油ピーク後の社会構築は国、市民の両方で考えるべき問題である。アメリカのような社会を目指すのか、エネルギー供給の制限の中で生活しているキューバのような国を目指すのか、それを今のうちによく考えるべきである。
投稿者: | 芦田 讓 |
Category: | 特集号(WEB学会誌) |
日付: | 2008年8月1日 |
公開日: 2008年8月1日
金 再奎、岩川 貴志、佐藤 祐一、内藤 正明
最近、わが国でも持続可能社会が各地で模索され始めたが、まだ明確な姿が描かれていない。
我々は”真の持続可能社会”を、環境的・社会的・経済的側面も視野に入れた、社会総体としての持続性を有するものと考えている。そこで、滋賀県を対象に石油文明そのものの転換をも含む新たな社会のビジョンを具体的に描き、そこへの道筋を探ることを試みている。
具体的には、滋賀におけるマクロ経済の動向とその下での民生・産業・運輸部門の諸活動、そしてそれらの活動に伴うエネルギーバランスや二酸化炭素排出構造の変化に至るまでの関係を複数のモデル群により表現、これらを連結することで、社会システムの在り方から環境負荷発生量までを一連のものとして推計することが可能なツールを構築した。
このツールを用いて2030年における滋賀の産業、家庭、業務、運輸部門の活動量を推計した。
それを基に、エネルギー消費量とそれに伴う温室効果ガスの排出量の計算を行い、”2030年時点で温室効果ガス排出を1990年比で50%削減”の目標を達成した滋賀の姿を、定量的にまとめた。
投稿者: | 金 再奎、岩川 貴志、佐藤 祐一、内藤 正明 |
Category: | 特集号(WEB学会誌) |
日付: | 2008年8月1日 |
公開日: 2008年8月1日
大久保泰邦
イースター島や江戸時代の例を考えると、資源が有限であることを感知できる、できないがその文明の運命を大きく左右することが分かる。
米国やヨーロッパは石油ピークを経験しており、感知していると考えられるが、日本の国民は経験が無いことから感知していないと思われる。
そこで、ここでは、1つのショック療法として、石油ピークによってもたらされる最悪のシナリオを示し、考えるきっかけを提供したい。
世界の石油生産量が急激に低下し、日本への原油の輸入量が激減した時、世界は硬直化・争奪戦となることが予想される。この時、日本では、一般販売のガソリンが無くなり、通勤は電車が中心だが超満員、電力ピーク時には停電となるであろう。
また、食料の輸送力が不足、輸入食料が激減し、包装を必要とする食品が姿を消し、コンビニエンスストアが閉鎖されると予想される。
また航空機の便数の激減、衣服などの化学製品の不足が起きるはずである。
物価は現在の2倍以上となり、決定、配給制となることが予想される。
最悪のシナリオを回避する最善策はみつからない。というのは石油ピークという社会リスクは我々が経験したことも無いことであり、何が起こるか予測不可能だからである。しかし日本人には「もったいない」で表される有限感が具わっており、あるがままを許容する、自然体の感性がある。
このもったいない精神は、石油ピークという未曾有の社会を生き抜く力を与えてくれるものとなるはずである。
多様な価値観を包含する社会の方が、社会危機の中で最善策を見つける力があり、従来型の生き方を打ち破る可能性がある。一方、あるがままを許容する社会は、多様性が少なく、そのため議論の集約化、意思統一が早く、効率的な発展を遂げる力がある。その反面、社会危機の中では最善策を見つける力、従来型を打ち破る力は弱い。日本はどちらかといえば後者であろうか。
前者と後者は矛盾しているかもしれないが、日本が生き抜くためにはこの矛盾を克服し、両者を兼ね備える必要がある。
投稿者: | 大久保泰邦 |
Category: | 特集号(WEB学会誌) |
日付: | 2008年8月1日 |
公開日: 2008年8月1日