岩崎 裕・松島 潤
新エネルギーには、太陽光発電、太陽熱発電、雪氷熱発電、バイオマス、地熱発電、風力発電、マイクロ水力発電などがあり、エネルギー現の多角化が図られている。
しかし、新エネルギーは大半が太陽や風力などの自然エネルギーであり、これらはエネルギー密度が低いため、石油に替わるエネルギー源に成り得ないという考え方も存在する。
そこで、新エネルギーの”質”について分析を行い、既存のエネルギーとの定量的な比較を行うことで、新エネルギーの代替可能性について検討する必要がある。
エネルギーの”質”を評価するための科学的アプローチとして、エネルギー収支分析がある。エネルギー終始分析とはEPR(Energy Profit Raito:エネルギー収支比)を求め、その値をもってエネルギーの”質”を評価していく分析方法である。
最近注目されている新エネルギーの1つにマイクロ水力発電があるが、エネルギー収支分析はまだ行われていない。
そこで実際に稼働しているマイクロ水力発電を視察・調査し、エネルギー収支分析を行った。
その結果、発電が十分にできるほどの水量や落差の確保が容易である地点におけるマイクロ水力発電はEPRが高く、エネルギーの”質”の観点では有望な発電システムであると結論付けた。
ただし、蓄電池を導入するとEPRが低下してしまうため、例えば夜間発生するエネルギーは蓄電池に蓄えるより捨てたほうが効率的であると解釈できる。
また、今回の評価対策は商業的に操業していない場合であることも、評価結果を解釈する場合に注意を要する。
投稿者: | 岩崎 裕・松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月31日 |
公開日: 2010年8月31日
大久保 泰邦
石油生産の状況を見ると、石油ピークは到来しつつあると考えられる。
欧米や中国は石油生産の豊富な経験から石油ピークを実感し、石油ピーク後の世界を想定して国家政策、企業経営を進めている。
しかし、日本は石油生産の経験に乏しく、石油ピークを意識した制作、企業経営となっていない。
米国は、広大な土地を使って、不毛の地からエネルギーを生産し、既存産業から新産業へ転換を試み、世界の覇権を維持しようとしている。
欧州は、多様な国家群の特徴を生かして、相互補完体制を築き、エネルギーの相互依存、基礎科学における知財と施設を共有化し、新たな国際競走に勝ち抜く社会に変貌しようとしている。
中国は、国内の巨大市場をベースにエネルギー・資源の余裕がある間に新しい中国を作り、石油ピーク後は原子力発電を行い、資源を持つもの作り国家として世界に君臨しようとしている。
一方、日本の政府は国際の場での主導権を獲得することに主眼を置き、マスコミは商業主義に陥りメジャーな見解だけで多様な見解を提示せず、学者・研究者はハイテクでエネルギー問題を解決できると思い、政策立案者は石油ピークの恐ろしさを理解していない。
自然エネルギーの開発や省エネルギーという科学政策は一見どの国も同じように見えるが、欧米や中国が目指すゴールは、石油ピーク後の社会づくりである。
石油ピークの影響の大きさと、それに対する対策の手薄さを考えると、日本は崩壊する可能性すらある。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月16日 |
公開日: 2010年8月16日
石井 吉徳(故人)
エネルギーが文明を支える。
Net Energyなしには文明は損しないからで、その評価はEPRが分かり易い。
今の石油文明は安く豊かな石油なしに存在しないが、その基が減耗しつつある、それが石油ピークという。
だがなんとかなると思う日本、石油後の未来戦略がないが、これはあたかも太平洋戦争当時、神風が吹くとまさに神頼みした日本を彷彿する。
民族の性向、本質は変わらないようである。
また失敗しないためが本論である。
先ず「地球は有限、資源は室が全て」を理解する、2005年ころから原油の生産は頭打ちである、
その後起伏はあるが基本的にプラトーである。変動は経済とリンクするからだが、これがピークの姿と考えるが、いずれ急峻な下り坂に向かうとみられる。
期待の新地域、大水深など話題は多いが、「質」はとみに劣化している。
メキシコ湾の事件などは典型、石油ピークの証左なのである。
これも資源の質の問題、技術でなんとかなる、と言うことではない。
技術とは、自然の恵み利用の仕方である、資源を創るものではない。
本論は、石油ピーク、エネルギー源の質を説明し、脱石油文明に備える「日本のプラン B」10項目を論ずるものである。
大陸でない日本だが、世界6位の海岸線長をもつ。
日本の地勢を理解し自然との共存する、が戦略の要である。
地域分散がその要諦である。
この至高は島国のアジア諸国の参考となると思われる。
戦略の基本は、経済成長を正義と思わないことである。浪費しない、もったいないで、心の豊かさを求める、GDPよりGDHと、低エネルギー社会を目指すことである。
投稿者: | 石井 吉徳 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月16日 |
公開日: 2010年8月16日
松島 潤
本稿では、まず起源の観点からLCA(ライフサイクルアセスメント)とEPR(エネルギー収支比)の違いについて比較し、EPRは生物存続に係る最も素朴な点に着目している点が重要であることを述べる。
続いて、EPRを用いた社会シミュレーションにより、米国のエネルギー事情を予測した例を紹介し、EPRが単なるエネルギー指標ではなく、社会とエネルギーの関係を包括的に把握できる側面を有している点について述べる。
来るべき低エネルギー社会は、自由裁量エネルギーの減少を意味し、そのメカニズムとしてエネルギー高騰に伴う物価高騰と需要減退に伴う景気後退(すなわちスタグフレーション)を指摘する。
さらに、1970年代に起こった2回の石油ショック時における日米両国の経済的反応についても統計データを用いた比較考察を行う。
最後に、エネルギー輸入国でのEPRの考え方へ概念的に拡張することにより、日本における特有な問題を指摘する。
投稿者: | 松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年5月28日 |
公開日: 2010年5月28日
松島 潤
本稿は、EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー収支比)の定義を再検討することで、その意義を明確化することによりEPRの適切な適用を促すことを目的としている。
人間の行為を「余剰エネルギーを生産する行為」とに便宜的に分けると、EPRの本来的な適用範囲は前者である。
従って、人工物の製造や利用については、「余剰エネルギーを消費する行為」に分類され、このような場合は、EPRではなく熱効率などの効率指標を用いるべきであろう。
また、EPRの社会的な重要性として、EPR低下が高インフレ率と景気後退(スタグフレーション)をもたらし、我々の社会に深刻な影響を与えうることを示した。
投稿者: | 松島 潤 |
Category: | 解説(WEB学会誌) |
日付: | 2012年2月22日 |
公開日: 2010年2月22日
中田 雅彦
有限な地球の資源を安価に利用できる限界に近づいている。
特に石油資源がそうである。
安価な石油で成り立っている現在の高エネルギー消費社会を低エネルギー社会に早急に構築しなおさなければならない。
ここでは、国内石油消費の約35%を占める運輸部門において、石油消費量と石油依存度を低減する可能性について考察する。対象とする時間枠は2030年とした。
産業部門において具体的な石油消費低減策を検討するためには、先ず将来の絵S基油供給をおおよその精度でもよいから予測することが必要になる。
そこで、入手可能な情報に基づき短中期の供給予測を試みた。
その結果、2−3年後に石油供給不足が発生し、2020年頃には石油生産ピークが発生する可能性が高いと判断された。
2030年には、世界の石油と石油相当の液体燃料は現在の2/3程度に減少すると予測された。
上記の石油供予測に基づき、運輸部門の石油消費低減策を検討した。
石油に替わる得る適切な液体燃料候補は現時点で存在しないので、運輸部門で今までに広く用いられてきた駆動源としての新しい組み合わせに変更して行かねばならないことになる。
すなわち、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、蓄電池電気自動車などの「電気駆動自動車」である。
しかし、液体燃料を完全に電気に置き換えるには、キマの蓄電池の数十倍の能力を持つ高性能蓄電池が必要であり、その開発のためにはまだ相当な年月がかかると言われている。
したがって、当分の間は、蓄電池の性能不足を補うために、この新しい駆動源を新しい交通システムと組み合わせることが必要になろう。
この新駆動源と新交通システムの組み合わせは2030年頃には、努力すれば実現化する可能性はある。しかしながら、数年先に発生すると予測されている石油供給不足には間に合わない。そこで、短期的に燃料消費を低減できる手法をいくつか提案する。
これらの短気、長期対策を併用することと、原子力発電の増強により、目標とする石油消費量を低減する可能性はあるが、官産民の強い意志と連携、努力が必要である。
投稿者: | 中田 雅彦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2015年5月4日 |
公開日: 2010年2月22日
Antony F.F. Boys
先進工業国は、エネルギーの総消費量の13〜18%を食料生産と消費に向けている。
このエネルギー消費の主な要素は機械類、燃料、化学製品(化学肥料や農薬)、輸送、食品加工、包装、販売と厨房関係などである。
これらの国々では、食料1カロリーを口に入れるために10カロリー程度の化石資源を消費している。
「石油ピーク」という言葉で象徴される今後の化石資源の入手困難な事態は、世界の人口の食料供給に対する大きな脅威である。
この文章の最後で、その脅威への対策を提案する。
投稿者: | Antony F.F. Boys |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2010年10月22日 |
公開日: 2010年2月22日
大久保 泰邦
石油ピークとは?
石油ピークとは、石油の生産のピークのことです。
一度増えた石油の生産は、やがてピークを迎え、必ず減退します。なぜなら石油は有限だからです。石油の枯渇とは生産量がゼロになることですから、石油ピークは枯渇のずっとまえに訪れることになります。
石油ピークが来ると何が起こる?
石油生産の歴史は世界の歴史そのものであり、石油ピークが到来すると、経済の混乱が起き、戦争が起きるという、この繰り返しになっています。
石油ピークはいつごろか?
石油生産量は伸び続け、1980年代半ばに発見料を上回りました。
すなわち、残っている石油の量、残存埋蔵量はそれ以来、年々少なくなっています。
ボーリングの世界最高深度は8850mであります。もうすでに8000mの深さまで掘り尽くしているのです。今後巨大油田をいくつも発見できる可能性は小さいと言えます。現在利用できるデータから考えると石油ピークは遅くとも2020年、早ければ2010年には到来します。
石油がなくなるとなぜ困るの?
我々の周りには石油製品で溢れかえり、石油で動いています。
なぜなら石油は大変便利なもので、素晴らしい力を秘めているからです。それを毎年プール250万杯分も使ってもまだまだあり、、おまけに安いのです。
この便利な資源に変わるものは残念ながらありません。無くなれば、大変なことが起こることが容易に想像できます。
なぜ石油ピークが出来るのか?
石油は一箇所蛇口を開ければ全部の石油が出てくるようなタンクのようなところにあるわけではなく、地中の地層の中に浸み込んで存在しているのです。
石油は地層の圧力でもって雑巾を絞るように押し出されます。しかし圧力が低下すれば、押し出される量も減少します。そこで生産量を一定に保とうとするのでありますが、それに反して時間とともに油層全体の圧力低下が起こり、生産ピークが出来上がります。
石油はどこからやって来たのでしょうか?
石油は海に溜まった生物の紫外から生まれました。
植物プランクトンは、太陽によって光合成をし、二酸化炭素を高エネルギーの糖質に変化させました。プランクトンの死骸は、海の浅いところで醸成され石油となるのです。
石油は適度な温度と圧力があってゆっくりと醸成されます。
石油が逃げ出さないように、蓄えるお椀をかぶせたような背斜構造とキャップロックという不透水性の地層がその上を覆うといった地質構造も必要であります。
世界の残存確認埋蔵量のうち、60%以上を中東が占めています。
なぜなら中東はこの条件にぴったりだったからです。
資源エネルギー制約が全てを支配する
資源エネルギーが制約する社会とは、資源エネルギーの量が制約されており、そのため、生産量、消費量、排気量の全てを制約するものです。
石油ピークはこの資源エネルギー制約の一つですから、我々の現代社会の全てを制約します。
石油ピークへの対策は現代が抱える全ての課題を克服できる
石油ピークを理解すると、金融資本主義の崩壊、地球温暖化、人口爆発、南北格差、テロ国家の出現、人材の流動化などの世界の課題の意味を理解することができます。
石油ピークを克服する対策を議論しましょう。
そうすれば世界が今抱えている課題の解決策は自動的に思い浮かぶのです。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2010年10月22日 |
公開日: 2010年2月22日
石川 宏
【論文】
家庭部門におけるエネルギー消費は、給湯30%と暖房22%で全体の半分を占め、この分野の省エネルギー化が求められる。
住宅の省エネルギー化にはさまざまなものがあるが、太陽の熱エネルギーを直接取り込み、暖房と給湯に用いるパッシブソーラーシステムがある。OMソーラシステムとして商品化されており、報告書には2002年に導入し、5年間のエネルギー消費、温度変化などについて統計データをとることができたので報告する。
加えてそのデータを用い、エネルギー収支の評価(EPR評価)を行った。
その結果、OMソーラシステムはエネルギー収支の良い住宅方式であるとの評価が得られた。
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2009年9月15日 |
【正誤表】
正誤表
16ページ左、下から3行目
誤:それによると、(C)は年間 106MJ である。したがって(A)は 106 - 69MJ となる。
正:それによると、(C)は年間 106GJ である。したがって(A)は 106 - 69GJ となる。
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2009年11月9日 |
【注釈】
OM ソーラーの「OM」とは、「おもしろい、もったいない」のこと。
OM ソーラー は、太陽エネルギーを電気に変換して使うのではなく、太陽の熱をそのまま使 うことを原理とした太陽エネルギー利用システム。
OM ソーラー株式会社ホームページより http://omsolar.jp/index.html
投稿者: | 石川 宏 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2011年4月29日 |
公開日: 2009年9月15日(正誤表掲示:2009年11月9日、注釈掲示:2011年4月29日)