NPO法人もったいない学会会長 松島 潤
2024年末現在、物価高騰の勢いは依然として止まらず、エネルギー価格や生活必需品の値上がりが続いています。一方、株価は高水準を維持しているものの、実態経済は低迷し、GDP成長率の鈍化や失業率の増加などが目立つ状況です。世界はスタグフレーションの状態に陥りつつあると言えます。
NPO法人もったいない学会は、エネルギーと文明の関係を正しく理解し、石油ピーク後の社会を生き抜くための方策を共に考え広めることを目的として2006年8月に発足しました。「石油ピーク」とは、世界の石油生産量がピークに達し、その後減少する時期を指し、エネルギー供給が不足することで経済や社会が大きな影響を受けると懸念されています。現在の状況は、まさに私たちが懸念していた石油ピーク後の社会、すなわち文明の転換期が到来したと考えられるかもしれません。歴史をひもとくと、人類は常により高性能なエネルギーへ転換することで文明を高度化させてきました。石油に代わるエネルギーへの転換(Energy transition)を目指してさまざまな技術開発が進められていますが、現実として私たちはエネルギー貧困(Energy poverty)という問題に直面しています。
世界的な不安定さが続く中で、世界のリーダーたちが東洋思想に注目する動きが見られます。マズローの欲求階層理論の最上階である「自己実現」が、この経済情勢では多くの人々にとって達成困難な状況です。そのため、自己実現よりも「社会や自然との調和」、「自己を超えた存在への到達」、「執着からの解放」を重視する東洋思想が、解決策として再評価されているのではないでしょうか。
「もったいない」精神は、東洋思想の影響を受けながら、日本の生活や文化に深く根付いた考え方です。「感謝」「敬意」「無駄を避ける」などといった価値観が基盤となり、それが日本独特の「もったいない」という概念を形成していますが、その定義は必ずしも明確ではありません。つまり、私たちは言語化が難しい領域で「もったいない」という言葉を認知・活用しているのです。この精神は、日々の小さな行動や感情を通じて、私たち一人ひとりが持続可能な未来に貢献できる力を秘めており、単なる言葉以上に、日本文化の深層に根付いた生き方の哲学であり、現代でも大切にされるべき価値です。
ケニア出身の環境保護活動家であり、2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏は、持続可能な社会を目指す活動の中で、日本語の「もったいない」という概念に感銘を受け、この言葉をグローバルな環境運動に取り入れました。マータイ氏は「もったいない」をRespect(尊重)と捉え、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再生利用)の3Rに加えた4Rとして提唱しました。ここでの「もったいない」の精神は、自然、生命、資源に対する感謝と敬意を表していると言われています。
「もったいない」の精神を直観的に理解してきた私たちは、これを体系化し、どのように私たちの生き方やビジネスに活用していくのか方策を考え、日本人として世界に発信していくことが求められています。
歴代会長挨拶
