石油、天然ガス、石炭といった化石燃料に大きく頼っている日本において、再生可能エネルギーの活用はエネルギーの多様化、安全保障、さらには分散型社会に繋がります。
再生可能エネルギーは自治体を中心に活発に開発されています。しかし開発可能量、エネルギー収支比、コストペイバックタイム、環境への影響などさまざまな要素を考える必要があり、簡単ではありません。
そこでこのサイトでは、自治体などで開発が進んでいる再生可能エネルギーの成功例をご紹介します。
さまざまな経験や知識について勉強できると思います。是非ご覧ください。
また実践についての投稿も歓迎しますので、大久保(Okubo-Yasukuni@jspacesystems.or.jp)までご連絡下さい。
山梨県における小水力発電モデル事業など
山梨県企業局 電気課 研究開発担当 主査 坂本正樹
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東近江市の循環・低炭素・自然共生が統合された持続可能な地域づくり
滋賀県東近江市市民環境部 森と水政策課 山口 美知子
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石井吉徳
says:フォーラムの企画、良いですね❕
一般市民(匿名希望)
says:私が現在の再生可能エネルギーに懸念を抱く理由(調整力の脱化石燃料化を!)
御党の脱原発の基本方針には大賛成です。
ただ、一般市民であり、消費者である人間としての立場から
私が現在の再生可能エネルギーの大量導入に
不安や懸念を抱く理由について聞いていただきたいと思い
メールしました。
それは端的に言えば、電気代が上昇し続けるにも関わらず
CO2の排出が減らず、停電の危険性が高まるのではないかと
思っているからです。
私は、2050年二酸化炭素80%減の内閣決議により
原子力の大幅に引き上げられることを恐れています。
しかしその一方で、いまのやり方では、結果的に電気代が
上昇するだけでCO2(=化石燃料資源)の削減にも、
外部コストの削減にもつながらないと考えています。
もし、そうであるならば、
一時的に雇用創出が発生したとしてもそれは、持続可能な
ものではなく、一時のバブル的なものになるでしょう。
結論を先に言えば、二酸化炭素排出低減の為には
風力や太陽光の大量導入だけではなく、変動電力を
系統接続するために、それに見合った調整力を化石燃料
から低炭素で低コストな蓄電設備に移行して増強する
必要があるでしょう。
風力や太陽光発電といった変動電源を大量導入しても
なぜCO2や化石燃料の消費が減らないのか?
それは、バックアップ電源や変動吸収といった調整力を
化石燃料の火力発電に頼っているからです。
変動電源を系統接続するためには二つのことを考慮
する必要があります。
ひとつは、台風や日暮れ後に地域全体で無風状態になった時、
風力も太陽光も発電できなくなった場合の為のバックアップ電源。
もう一つは、変動電源と逆の変動を起こして相殺し電力の電圧と
周波数を一定に保つ変動吸収です。
この二つの条件を満足させないと、電力会社は供給責任を
果たせません。
これらの調整力の設備を太陽光や太陽光発電の受け入れる
電力量に応じて増強していかなくてはなりません。
もちろん、それが揚水発電所や蓄電池のような炭素を排出しない
設備であれば、なんの問題もありません。
しかし実際には揚水発電所の適地は限られていますし、
電池の価格は非常に高価です。
そうすると、ドイツのように褐炭等の化石燃料の火力発電所で
この機能を果たさざるを得ないことになります。
現在火力発電所は起動まで数日かかり、しかも最低出力が
決まっています。そこで突然風が止んだり曇ったりすることに
備えるために(またその慣性力で秒単位以下の変動を吸収
するため)常にアイドリングしておく必要があります。
そして夕暮れ時になると、太陽光の出力が落ち、夕飯の支度で
家庭の電力需要が増えるので、急加速で出力を上昇させないと
「同時同量」を維持できないのです。
変動電源の導入量が少ないうちは、(リーマンショックで電力需要が
減り、火力発電所の設備容量が余剰気味であったことも幸いして)
このことはあまり目立たずに、需要変動に備えた調整力(稼働
に余裕をもたせること)を、変動電源にも割り当ててきました。
そして実際に燃料の消費量も全体としていくらか抑えることも
できていました。ところが太陽光や風力の大量導入が進み、
基幹電源として優先されるようになると、これらの変動電源を
系統接続するために調整力として稼働率の低い火力発電所を
新たに建設しなければならないようなジレンマが発生してきました。
こうなると、普段はアイドリングさせておき、夕暮れになると
急加速させる低稼働率の火力発電所が増えてしまう
のですから、CO2が減るはずがありません。
それだけではありません。いくら太陽光パネルや風力発電の
コストが下がろうとも、その裏で非常に稼働率が低く、低効率の
火力発電所を抱え込むのですから、二重設備になるだけでなく
非常に高コストになってしまうのです。
さらに問題を複雑にしているのは電力の価格体系が電力の質
には関係なく一律KWhいくらで設定されていることです。
このため、太陽光パネルの価格低下と、保存できずに売り切ら
なければならないという電力の特性から電力価格が異常な
低下を起こして負の価格を生じるような結果になっています。
結果的に火力発電所はコストの高い天然ガス、石油
石炭の順に市場から撤退していき、ついには褐炭火力まで
撤退しようとしています。
そこへCO2排出を低下させようとして、高い炭素税をかけたり
法律で石炭・褐炭の火力発電所を禁止したりして追い打ち
をかけています。
すると、電力システムは調整力を失って停電するか、あるいは
風力や太陽光の系統接続を制限するかの二者択一を迫られる
ことになります。自分で自分自身の首を絞めてしまったのです。
このことを避けるために、一方で「容量市場」なる市場を創設し
化石燃料による火力発電所を保護しようとする自己矛盾する
政策が検討されています。
この迷走の原因は、調整力の設備をいかに低炭素なものに
するのかという視点が欠けている点と、そもそもそのままでは
変動が激しくて使えない質の悪い風力や太陽光電力と、
安定しており調整力機能も備えた質の良い火力発電の電力
の価格を同じに扱うという市場原理に反した取引をおこなった
ことにあると考えています。
このようになると、便益だけでなく外部コストの低下に
風力や太陽光がなんの貢献もしなくなってしまいます。
現在、二重設備をできるだけ小さくしようと、送電線増設や
VPP、アグリゲーター、アンシラリーサービスなどの市場や
予測、分散コントロールシステムを工夫を検討しています。
しかし全体の調整力を担保するだけの設備が不足すれば、
停電は起きてしまいます。
端的に言えば、貯めることのできない電力システムにおいては
風力や太陽光の変動発電は二重設備にならざるえないということです。
外部コストを考えるならば、風力や太陽光といった
変動電力を系統接続をするときに発生する、調整力のコスト、
すなわち、バックアップ電源や変動吸収のための
設備コストを計算に入れるべきだと思っています。
こんなことを書くと「お前は、産業革命時代の石炭文明に戻る気か?
さもなければフランスのように原発に頼る気か?」
という非難が聞こえてきそうです。
そこで私なりの解決策を提言してみたいと思います。
1.変動エネルギーでない自然エネルギーへのシフト
地熱発電や大・中水力、黒潮発電、海洋温度差発電?のように安定した
出力の自然エネルギーや木質等のバイオマスにシフトします。
ただし、発電規模に限界があるのが難点だと思っています。
2.調整力設備の低炭素化と蓄電設備の低コスト化
変動電力で同時同量を実現するためには どうしても低コストな
蓄電設備が必要となります。風力や太陽光といった変動電力の
大量導入を考えるのであればそれに見合った低炭素な調整力用
設備をどのように調達するのか考えるべきです。
揚水発電所の増設と出力の変動化、蓄電池の更なる低価格化と大電流化
Power to Gas(水素 :東芝H2ONEやホンダ)、Power to Chemical
(アンモニア・メタン・エタノール・トルエン。アンモニアやメタンからは
水素に戻さなくても直接燃料電池として機能する設備も必要になる
かもしれません。)
個人的には、昔のオランダの風車のように、直接ポンプで揚水する
発電設備も有効だと考えています。
いずれにしてもその効率が問題です。 少なくとも、元の電力に戻した時
にKW当たり揚水発電と同じ程度の設備コストとKwhあたりも同程度になる
寿命と保守コストが求められるでしょう。
3.変動電力をそのまま利用する電気自動車充電器や家電品の開発
個人的には変動電力をそのまま利用できないかと考えています。
現在、電気自動車の蓄電池を利用して系統の安定化を図る一種の
アンシラリーサービスが検討されていますが、これは非常に困難です。
(走らないのに愛車の寿命が縮まってしまうのではないかも心配です)
それよりも、まずは風力や太陽光の変動電力のまま充電できる
パワーステーションを作り、予約システムと連動させた方が簡単だと
思います。これから電力需要が大幅に伸びるのは電気自動車などの
輸送部門ではないかと考えられています。それを洋上風力等で直接
賄うことができれば非常にメリットがあります。
既存の電力系統と別の系統にすれば、従来の系統では変動吸収や
バックアップ電源のことを考えなくてもすみますし、充電する側は
少々停電しようが周波数や電流が変動したりしてもとにかく充電できれば
よいのですから利便性はそれほど損なわれないでしょう。
そうやって考えると、家庭にある電熱系のポットや炊飯器、冷蔵庫・エアコン
なども 変動電力仕様のものを設計することはそれほど困難なことでは
ないように思えます。テレビやパソコンもLED照明もリチウムバッテリー付
にすれば たちまち変動電源仕様になることでしょう。
もちろん、配電からコンセントに 至るまで系統は分離しなくてはならない
ので費用がかかりますが、その分、変動電力を大幅に安くすれば、
あるいは自宅の太陽光発電で賄うようにできれば採算は取れるでしょう。
送電線も地域内の地産地消をモットーにすれば配電網内で閉じることが
できるのではないでしょうか?
4.電力の質に応じて価格の決まる市場整備と調整力確保
蓄電設備の低コスト化を画期的に進めるためには、電力の変動率等の
質や安定供給度に応じて価格が決まる電力市場が必須だと考えています。
FITは近い将来卒業しなければなりません。そうした時に、今のように電力の
質を無視してKWhいくらの市場を続けていくと、火力発電所は木質バイオを
含めて総撤退して、調整力が確保できなくなり、電力系統はダウンして
しまいます。まさに「悪貨が良貨を駆逐する。」ような事態が起きるのです。
そういった意味では現行の、基幹電源市場を別に設けたエネ庁の施策を
評価しています。将来はもっときめ細かく電力の質や供給安定性に従って
価格が決まるような電力市場を、経済学や政策学の先生方に考えて
いただきたいと思っています。その際のキーポイントは、市場に任せて
おけば自然に調整力の総量が確保されるような市場を設計することです。
現在の電力市場の自由化や送配電分離の方向にも不安を感じています。
現在の市場自由化の動きは、従来電力会社が発電から送配電まで川上から
川下まで地域ごとに垂直に管理してきたものを、階層ごとに分けて自由市場化
しようとするというものです。今までの電力会社はその頂点の送電系統運用者
(Transmission System Operator、以下TSO)として供給責任を持つことに
なるのだそうです。
個人的には二つの心配があります。ひとつは揚水発電所や火力発電所と
いった調整能力、いわば手足をもぎ取られて、市場との取引だけで調整力を
確保できるのかという問題。南オーストラリア州のように嵐や台風が襲来した
場合、バックアップ電源等の調整力の総量が不足してしまえば、市場から
調整力を調達できずに停電がおきるのではという心配です。
もう一つは、風力や太陽光の系統接続はTSOにとって、なんのメリットもない
どころか、それに応じた調整力を市場から調達する必要が生じるので、
経営上、一方的に負担を負うことになります。
倒産してしまうか、変動電力の受け入れ量に比例して送電料金を値上げ
し続けなければならなくなります。
きっと誰も供給責任を負わされるTSOをやりたがらないでしょう。
保存ができない限り、また電力の質に応じた価格が市場で形成されない限り、
電力市場で見えざる神の手が働くことはなく、市場の失敗が発生するのでは
ないでしょうか?
アンシラリーサービスの市場を作ったところで調整力の総量が不足すれば
停電は避けられないし、アンシラリー業者は非常に稼働率の低い
火力発電設備か非常に高価な蓄電設備を抱えることになるので、
よほど高額な保険料のようなものを徴収しなければやっていけません。
また高価な調整力電力は、電力システムがより破たんに近づいたときに
高い値で売らなければならないので、(停電してから売ったほうが儲かる)
電力システムの安定化には役立たない可能性もあります。
送配電分離をして完全な電力市場の自由化を行うのであれば、この点についても
うまく解決できるような市場メカニズムを経済学者は設計しなければなりません。
5.自然排出のCO2削減(ブルーカーボンと山火事鎮火)
最後に、人為的以外のCO2についても触れておきたいと思います。
IPCCは産業革命以降のCO2の人為的排出の累積値ばかりを強調
していますが、CO2は生物の光合成と呼吸によって大気中を循環
していますし、火山や、山火事からの自然由来の排出量も莫大である
ことを忘れないでください。これらの循環量全体から比べると人為的
排出量は3%程度なのだそうです。
インドネシアで泥炭の大規模な火災が発生した年には、その年の
人為的に発生した総量に匹敵するCO2がその火災だけで
発生したそうです。
また、アマゾンやインドネシアの熱帯雨林やタイガの森林だけでなく、
海洋沿岸のプランクトンや海藻・海草が光合成によって固定するCO2
の量も莫大で、現在の火力発電所が排出するCO2に匹敵する
量なのです。この沿岸のプランクトンや海藻が吸収するCO2の
ことをブルーカーボンと呼び、海洋環境を守ろうという運動が起きて
います。黄海の海洋環境を守れば、CCSやCCUSよりも地球全体の
CO2を減らすうえで効果があるし、コストパフォーマンスもはるかに
良いでしょう。それだけでなく漁業資源にも貢献するでしょう。
同様に、山火事の延焼を初期に食い止めることが
できれば、大幅に地球全体のCO2を減らすことができるのです。
太陽光や風力の変動電源と、バックアップ電源や変動吸収力等の
調整力は車輪の両輪です。変動電力だけを大きくして系統接続する
ことはできません。ですから変動電源の系統接続量を増やそうと
するなら、いかにこの調整力の総量を低コストで増やしていくかを
考えなければなりません。
この調整力をいかに化石燃料による火力発電所からCO2を出さない
蓄電設備に移行するかが本質的な問題なのです。
送電線は、この調整力を多く持っている地域から不足している地域へ
融通するという意味では運用の柔軟性を確保する効果はありますが、
調整力の全体量を増やすという意味では何の効果もありません。
(配電網とは異なり送電線では逆潮流は認められず、電流の流れる
方向は必ず一方向であることが求められていることも大きな制約でしょう)
この調整力を化石燃料に頼る限り、発電設備をすべて風力や太陽光
にしたからと言って、日本のエネルギー安全保障の問題が解決した
事にはなりません。そんなことをすれば電力系統の安定性が
破たんするからです。
蓄電設備のコスト低下が風力や太陽光の変動電力を系統接続する
上で最も重要になってくることでしょう。
このコストが低下して、初めて風力や太陽光といった自然エネルギー
100%の世界が実現するのです。それまでは少しづつやりくりしながら
変動電力の系統接続を増やしていくより他に手がないのです。
ご参考
個人的には、送電線の容量は本質的問題ではないと考えています。
たとえ十分な送電容量があったとしても変動電源は調整力の分
(バックアップ電源の容量&変動吸収の能力)だけしか
系統接続できないからです。
九電では五月連休の太陽光の余剰電力のことばかり話題になりますが
九州全土を覆う強い台風が来たらどうなるのでしょう?
風力発電はプロペラを守る為に止めざるを得ませんし、太陽光は
雨で発電できません。したがって供給責任を考えるとバックアップ電源
の分しか変動電力は受け入れられず、二重設備にならざるを得ないのです。
実際、昨年南オーストラリア州を嵐が襲ったとき大停電が発生してしまいました。
送電線が嵐の影響を受けたせいとされましたが、全体的な調整力不足が原因では
ないでしょうか?
一方、停電が発生していないドイツではどうでしょうか?
二重設備になっているため、ここ数年消費電力は変わっていないのに、
風力や太陽光を含めた発電の設備容量は増加し続けています。
理由は簡単で、変動電力の設備容量が増加しても既存の発電設備をバックアップ
として持つ必要があり減らすことができないからです。
この稼働率の低いバックアップ電源にコストの安い褐炭火力を使って
常にアイドリングさせておき、風が弱まった時のために待機させるとともに
夕暮れ時は太陽光の電力が落ち家庭の夕食時の需要が増えるので急加速
しなければなりません。このため、福島事故以降風力の設備容量は倍以上
増加しているのに、二酸化炭素の排出量は減るどころか逆に微増しています。
(日本では原発を止めたにもかかわらず節電のため排出量が減ったとの事です)
おまけに、二重設備を抱えることになり電気代の小売価格は上がる一方です。
南オーストラリアではさらに高騰していることから、ドイツの税制やFIT制度の
為とは言えません。
話を元に戻すと、九電は台風が来た時のために、中国電力や四国電力から
支援を受けるために送電線の送電容量をあけておかねばならず、
揚水発電等の調整能力が限られているため、これ以上の変動電源を受け入れる
ことができないのが実情だと思います。
以上