鎗谷 浩明・松島 潤
本研究ではエネルギーの質を測る指標であるエネルギー収支比(EROI)を用いて、日本社会の持続性についての包括的な分析を行った。
まず、エネルギーの質・量の双方から現在の日本のエネルギー事情を捉えるため、各種エネルギーの供給量と EROI を求め、グラフを作成した。その結果、日本全体における EROI の値は年々減少する傾向が確認され、また化石燃料に代わるエネルギーとして期待されている各種再生可能エネルギーが、供給量・EROI 共に化石燃料と比べて低い値を示していることがわかった。
次に、社会が持続するために必要な最小 EROI を求めた。
本研究では、運輸システムを維持することが社会の持続のための最低条件であると考え、原油の燃料としての使用過程まで考慮に入れたEROI が1以上であれば、運輸システムは成立し、社会の持続性は保たれるとした。
以上の仮定を置いて計算を行った結果、社会の持続に必要な最小 EROI は 1.4 と導かれた。
つまり、EROI が 1.4 を下回ると、運輸システムが担保されないために、社会活動は確実に成り立たない。
ただし、この値を超えれば現在の社会活動が維持できる十分条件を意味せず、石油を運輸システム維持だけに使い、それ以外の自国内消費には全く使わない社会を意味し、エネルギー収支の観点から社会の持続性を確保できる最低必要条件を定量的に評価する指標の一つとして考えられる。
投稿者: | 鎗谷 浩明・松島 潤 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
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日付: | 2012年4月23日 |
公開日: 2012年4月23日