大久保泰邦
インドの特徴は、人口の急速な増大、急速な経済成長である。
このまま成長を続ければ、インドでのエネルギーの消費量は増大し、やがて世界はエネルギー機器に直面すると言われている。
しかし多くの点で日本を含めた工業化社会と異なるシステムを有する。
第一に、人口は約11億人で、中国に次いで世界第二位に相当し、25歳以下が50%を占めており、また年収が10万円に達しない貧困層は人口の3割以上を占めている点である。
都会は若い人々が溢れ、安い労働力が豊富にあるため、人力でビル建設などを行う。
貧困層は生ごみを活用し、都会には生ごみが少ない。
農業においては、労働集約型の農法で、工業化農法と異なり、少ないエネルギー消費で高い収穫高を上げている。
工業化農法では、エネルギーを大量投入するため、労働力は大幅に削減できるがEPRは極めて低くなる。
それに比べインドの農業は高いEPRとなる。
しかし労働集約型のため、一人あたりの収穫量は工業化農法に比べ低い。
農村部に貧困層が集中するのはこのためである。
第二に、インドでは牛、豚、羊、ラクダ、象などの家畜は4億7千頭もいることである。
家畜は輸送手段として、また農業の労働力として、また家畜の糞を肥料として利用して、石油消費を節約している。
第三に、宗教上の理由から肉食人口が少なく、エネルギーの多消費産物である肉の一人あたりの消費は先進国に比べ小さい点である。
インドは、先進国のエネルギー大量消費型社会とは異なり、人力、家畜の力を利用したエネルギー小消費型リサイクル社会となっている。
インド政府は近年のエネルギー需要の急速な増加に伴い、インド国内の広大な未利用の土地に、ジェトロファなどのバイオマスエネルギーに相応しい農作物の栽培や、森林生産廃棄物の利用技術開発を考えている。
このポテンシャルは約2000万キロワットと評価されている。
実際に2004年末の時点で、発電容量は61万kwのバイオマス発電設備が設置され
また2001年より2ヶ年計画でバイオマスエタノールをガソリンに5%混合する計画を開始し、パイロット事業を実施している。
一人当たりの所得が多ければ多いほど、一人当たりのエネルギー消費量も多いという1次関数の関係がほぼ成り立っている。
しかし、インドの場合貧富の格差、豊富な労働力、少ない肉食人口といった先進国と異なる社会構造を有している。
この社会構造は、結果的にエネルギーの無駄の無いシステムとなっている。従って、経済成長し、一人当たりの所得が増えたとしても、このシステムが機能する限り、エネルギー消費はそれ程増えないであろう。
しかしこのシステムでは貧富差が大きいため一人当たりの生産性の伸びは頭打ちになるはずである。
日本においても、工業化農法への転換前に普及していた農業を再認識し、地方における農業を再活性化できないか。
ぞ、地元で採れた新鮮な野菜を外に運び出さず地元で消費するシステムを作ることも一案である。
また地元の農業廃棄物をバイオマス資源として利用することも考えられる。
投稿者: | 大久保泰邦 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2007年7月31日 |
公開日: 2007年7月31日