大久保泰邦
イースター島や江戸時代の例を考えると、資源が有限であることを感知できる、できないがその文明の運命を大きく左右することが分かる。
米国やヨーロッパは石油ピークを経験しており、感知していると考えられるが、日本の国民は経験が無いことから感知していないと思われる。
そこで、ここでは、1つのショック療法として、石油ピークによってもたらされる最悪のシナリオを示し、考えるきっかけを提供したい。
世界の石油生産量が急激に低下し、日本への原油の輸入量が激減した時、世界は硬直化・争奪戦となることが予想される。この時、日本では、一般販売のガソリンが無くなり、通勤は電車が中心だが超満員、電力ピーク時には停電となるであろう。
また、食料の輸送力が不足、輸入食料が激減し、包装を必要とする食品が姿を消し、コンビニエンスストアが閉鎖されると予想される。
また航空機の便数の激減、衣服などの化学製品の不足が起きるはずである。
物価は現在の2倍以上となり、決定、配給制となることが予想される。
最悪のシナリオを回避する最善策はみつからない。というのは石油ピークという社会リスクは我々が経験したことも無いことであり、何が起こるか予測不可能だからである。しかし日本人には「もったいない」で表される有限感が具わっており、あるがままを許容する、自然体の感性がある。
このもったいない精神は、石油ピークという未曾有の社会を生き抜く力を与えてくれるものとなるはずである。
多様な価値観を包含する社会の方が、社会危機の中で最善策を見つける力があり、従来型の生き方を打ち破る可能性がある。一方、あるがままを許容する社会は、多様性が少なく、そのため議論の集約化、意思統一が早く、効率的な発展を遂げる力がある。その反面、社会危機の中では最善策を見つける力、従来型を打ち破る力は弱い。日本はどちらかといえば後者であろうか。
前者と後者は矛盾しているかもしれないが、日本が生き抜くためにはこの矛盾を克服し、両者を兼ね備える必要がある。
投稿者: | 大久保泰邦 |
Category: | 特集号(WEB学会誌) |
日付: | 2008年8月1日 |
公開日: 2008年8月1日