油田

地下に石油(正確には原油)を埋蔵している区域のことです。
原油は黒褐色または黒緑色の粘り気のある液体であり、これを精製して得られるガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品ができます。

石油は地下に存在しますが、この深度に大きな空洞のような空間があり、「石油のプール」のような状態で溜まっているわけではありません。土圧のかかる地下では、プール上の液体では存在できず、石油は岩石粒子間の細かな隙間(孔隙と呼びます)に水と一緒に入りこんだ液体状態で存在しています(これを油層と呼びます)。
ミクロな孔隙が多く、石油がたまりやすい岩石を貯留岩と呼んでいます。

これらは大きな集団になります。土圧の大半は貯留岩が受け持ち、土圧の一部は石油にかかります。なお、石油の存在する深度は地下100メートル以深、最近では7000メートル以深でも確認されています。経済性の観点から、埋蔵深度の浅い油層から順次開発対象とされていきまして、時代とともに対象油層の深化が進んでいきます(すなわちEPRの低下になります)。現在では、深度数千メートルの油層が対象とされています。

世界には4万箇所以上(90カ国以上)の油田がありますが、その分布には地域的な偏りがあり、60%以上が中東地域に分布しています。

世界最大の油田であるサウジアラビアのガワール油田、第二位のクウェートのブルガン油田などは中東諸国に位置します。
油田の規模は埋蔵量(石油の体積量)で表現され、その単位としてバレル(1バレルは約159リットル)が用いられています。
可採埋蔵量5億バレル以上の油田を巨大油田、50億バレル以上の油田を超巨大油田と呼びます。さきほどのガワール油田とブルガン油田は600億バレル程度の超巨大油田です。
石油の偏在性は、石油の成因に深く関わってきます。

石油の成因については、完全に解明されているわけではなく、有機起源説と無機起源説に分かれますが、現状では有機起源説が有力な説になっています。
有機起源説では、大昔の動物・植物・微生物などの有機物が土砂とともに幾重にも堆積し、地熱と圧力の影響を受けながら長い時間をかけて石油になったとしています。
このようにして生まれた石油は比重が小さいため、岩石中の細かい孔隙を通じて上へ上へと移動していきます。
やがてミクロな孔隙が多く石油がたまりやすい貯留岩の帯にたどり着き、さらに上へ移動しようとする際、孔隙の少ない岩石が存在するとそれ以上移動することができず(石油が上部に散逸しないための蓋の役割をします。
これを帽岩またはシールと呼びます)、そこに貯められていきます。
このように効率的に大量の石油を貯めておくのに適した地質構造(これをトラップと呼びます)であれば、石油貯留層となります。

図1にいくつかのトラップを示します。
なお、大量の有機物が土砂とともに堆積する環境は、時空間的(地理学的かつ地質時代的)に強い制約を受けます。このことにより油田は世界的に偏って存在することになります。

地下から石油を汲み上げる(これを生産と呼びます)には、まず石油が地下のどこに埋蔵されているか場所を予測することが大切です。
これには、高度なエレクトロニクス技術を駆使した地震探査技術が用いられます。

妊婦さんのお腹にいる赤ちゃんの様子を画像化する超音波診断技術は、お腹にセンサーを当てて超音波を体内に送り、反射して戻ってきた超音波を捕らえて画像化します。
最近では赤ちゃんの三次元的な様子、さらに時間軸を加えた3次元動画像により赤ちゃんの動く様子を立体的に観察できるようになりました。

地震探査技術はこの技術の地球版と考えてください。
石油を貯めてありそうな構造を発見することができます。地震探査技術による探査結果を参考にして、またいくつかの井戸を試験的に地球に掘ることによって油田として有望な区域を絞っていきます。最終的に、運良く有望な区域を発見できたら、さらに詳細な埋蔵量評価・生産性評価をしていきます。

前述のように石油の貯まった層(油層)は土圧の一部の大きな圧力を受けていますので、この油層に井戸を掘れば、圧力により井戸から勢いよく石油が噴出してきます(これを自噴と呼びます)。
このように、油層が本来持っているエネルギーだけで石油を回収することを一次回収といいます。その後、長期間にわたって石油生産を続けると、油層自身の圧力は低下し、生産量はしだいに減退します。
一次回収では、油層内の原油量の2〜3割程度しか生産できません。
生産にしたがって油層のエネルギーが弱まった段階で、水やガスを圧入して油層の圧力を維持して石油を回収することを二次回収と呼び、回収率は3〜4割程度に向上できます。これでも油層には6〜7割の石油が残されています。
そこでさらに油層に熱的あるいは化学的な刺激を与えて回収率を向上するための研究が行われています。
これを三次回収あるいはEOR(Enhanced Oil Recovery)技術と呼びます。

以上のように石油の埋蔵量の値は、石油の回収技術の向上により上方に修正されていきまして、これを油田成長と呼びます。

非在来型石油(現状ほとんど実用化されていないが、将来的に利用できる可能性がある石油)としてオイルサンド、オイルシェールがあります。
オイルサンドは侵食などの地殻変動によって油層が地表付近に移動し、軽質成分が揮発してしまい重質化した石油を含んだ砂です。
カナダではすでに商業生産が行われています。生産の際に地下に水蒸気スチームを圧入して重質油を流動化させるために、投入エネルギーに見合う回収エネルギーが必要となります(在来型の石油に比べてEPRが低下します)。
一方、オイルシェールは、理没深度が石油の熟成度にまで達しなかった、「石油のできそこない」であると言えます。したがってオイルシェール採取後は乾留による熱分解により石油を抽出する必要があるため、ここでも投入エネルギーに見合う回収エネルギーが必要となってきます。すなわち、この場合も在来型の石油に比べてEPRが低下します。

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図1 石油トラップの種類(物理探査学会編「図解物理探査」より引用)

段、利用形態、利用技術、環境に与えるコストなどによって異なります。