横田 俊之
三次元地震探査機は、今までに抽出し得なかった断層まで抽出することが出来る。
これまで、活断層調査に対する適用例は少ないが、その理由は単に費用がかかるためであり、安価な二次元探査で十分満足できる結果が得られる、という判断があったためである。
日本には多数の活断層が存在し、その多くの性状がよく知られていないというのが現状である。
活断層は、比較的小規模でも、我々の生活を脅かす直下型地震の原因となり得る。
阪神淡路の例を挙げるまでもなく、そのような地震は多大な被害を引き起こすが、原子力発電所のような重要建造物がひとたび地震被害をうけるとその影響は多岐にわたり、たいへん深刻なものとなる。
従って、いかに精度よく活断層を抽出するかは非常に重要な問題である。
本稿ではまず、二次元および三次元地震探査の相違点について簡単に説明する。
続いて、三次元の地質構造探査に、二次元地震探査を用いた場合、地下構造解釈を誤る可能性の一例を示す。
以上により、三次元地震探査の有用性および必要性を論じる。
投稿者: | 横田 俊之 |
Category: | 解説(WEB学会誌) |
日付: | 2007年11月22日 |
公開日: 2007年11月22日
(※2007年11月28日に正式ファイルにリプレースいたしました)
大久保泰邦
石油は有限である。
人類は現在までに1兆バレルの石油を消費した。
今後人間が利用できる石油の送料は2−3兆バレルと言われている。
一方、従来型の石油に、オイルサンド、オリノコ重油、オイルシェールを加えれば7.5兆バレルあり、可採年数は280年であるとの主張もある。
オイルサンド、オリノコ重油の原始埋蔵量は約2兆バレルと推定されている。
また、オイルシェールの原始埋蔵量は3兆バレル以上と言われている。
7.5兆バレルの議論はこの原始埋蔵量を基にしている。
しかし、原始埋蔵量とは地下に存在する総量のことである。
石油の寿命を議論する時は、技術的、経済的に生産可能な量である可採埋蔵量を基にしなければならない。
原油の2005年の確認可採埋蔵量は1兆2000バレルである。またオイルサンド、オリノコ重油の可採埋蔵量はそれぞれ1790億バレル、2700億バレルと見積もられている。オイルシェールについては、技術的、経済的に生産可能な量はほぼゼロと言える。
そこで原油の可採年数は40.6年、オイルサンドとオリノコ重油の可採年数はそれぞれ6.0年、9.1年となる。
世界の石油生産は、最初は需要に応じて生産量が増加する。
しかし有限であるためにいつかは生産のピークが訪れ、下降し始める。
これが石油ピークである。
可採年数は石油がある日突然枯渇するまでの年数ということであるが、現実的な指標とはなっていない。むしろ枯渇よりずっとまえに訪れる石油ピークのほうがより実際の生産推移を表し、また現実亭な課題定義となっている。
我々が本当に問題にしなくてはならないのは、可採年数ではなく、石油ピークがいつ来るかである。
投稿者: | 大久保泰邦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2007年9月14日 |
公開日: 2007年9月14日
大谷正幸
本論文は、石油減耗時代の指針として語られる「農業を基盤としたローカル・コミュニティの再生」の可能性について考察したものである。
都市化が進んで農業が衰退する主要な原因である経済的要因に着目し、その経済的要因が熱力学の第2法則にもとづくエネルギー変換ロスに由来していることを示す。
エネルギー変換効率における物理的制約は、同一エネルギー量で比較した各種エネルギー供給量の関数として経済規模の長期的傾向を再現することができ、都市化が進んで農業が衰退する根本的原因が考察される。
得られた知見にもとづいて、石油消耗時代が展望される。
投稿者: | 大谷正幸 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2007年9月14日 |
公開日: 2007年9月14日
松島 潤
本解説文は石油ピーク論の基本的な概念を理解するための石油資源の開発に関する基礎知識について説明する。
石油ピーク論は、人類が利用可能な石油の半分を使用したこと、またその人類社会への影響を指摘するものである。
このことは、安く豊かな石油の時代の終焉であることを意味しており、安価な石油に依存してきた社会のあり方を変革することの必要性を警鐘するものである。
石油ピーク論の理解を助けるために、地球科学・地球光学的な視点で石油の生成・探査・回収について平易に解説することにより、石油の有限性・埋蔵量の不確実性・資源の「質」の重要性など石油ピーク論を理解する上での基礎知識を提供する。
投稿者: | 松島 潤 |
Category: | 解説(WEB学会誌) |
日付: | 2007年7月31日 |
公開日: 2007年7月31日
大久保泰邦
インドの特徴は、人口の急速な増大、急速な経済成長である。
このまま成長を続ければ、インドでのエネルギーの消費量は増大し、やがて世界はエネルギー機器に直面すると言われている。
しかし多くの点で日本を含めた工業化社会と異なるシステムを有する。
第一に、人口は約11億人で、中国に次いで世界第二位に相当し、25歳以下が50%を占めており、また年収が10万円に達しない貧困層は人口の3割以上を占めている点である。
都会は若い人々が溢れ、安い労働力が豊富にあるため、人力でビル建設などを行う。
貧困層は生ごみを活用し、都会には生ごみが少ない。
農業においては、労働集約型の農法で、工業化農法と異なり、少ないエネルギー消費で高い収穫高を上げている。
工業化農法では、エネルギーを大量投入するため、労働力は大幅に削減できるがEPRは極めて低くなる。
それに比べインドの農業は高いEPRとなる。
しかし労働集約型のため、一人あたりの収穫量は工業化農法に比べ低い。
農村部に貧困層が集中するのはこのためである。
第二に、インドでは牛、豚、羊、ラクダ、象などの家畜は4億7千頭もいることである。
家畜は輸送手段として、また農業の労働力として、また家畜の糞を肥料として利用して、石油消費を節約している。
第三に、宗教上の理由から肉食人口が少なく、エネルギーの多消費産物である肉の一人あたりの消費は先進国に比べ小さい点である。
インドは、先進国のエネルギー大量消費型社会とは異なり、人力、家畜の力を利用したエネルギー小消費型リサイクル社会となっている。
インド政府は近年のエネルギー需要の急速な増加に伴い、インド国内の広大な未利用の土地に、ジェトロファなどのバイオマスエネルギーに相応しい農作物の栽培や、森林生産廃棄物の利用技術開発を考えている。
このポテンシャルは約2000万キロワットと評価されている。
実際に2004年末の時点で、発電容量は61万kwのバイオマス発電設備が設置され
また2001年より2ヶ年計画でバイオマスエタノールをガソリンに5%混合する計画を開始し、パイロット事業を実施している。
一人当たりの所得が多ければ多いほど、一人当たりのエネルギー消費量も多いという1次関数の関係がほぼ成り立っている。
しかし、インドの場合貧富の格差、豊富な労働力、少ない肉食人口といった先進国と異なる社会構造を有している。
この社会構造は、結果的にエネルギーの無駄の無いシステムとなっている。従って、経済成長し、一人当たりの所得が増えたとしても、このシステムが機能する限り、エネルギー消費はそれ程増えないであろう。
しかしこのシステムでは貧富差が大きいため一人当たりの生産性の伸びは頭打ちになるはずである。
日本においても、工業化農法への転換前に普及していた農業を再認識し、地方における農業を再活性化できないか。
ぞ、地元で採れた新鮮な野菜を外に運び出さず地元で消費するシステムを作ることも一案である。
また地元の農業廃棄物をバイオマス資源として利用することも考えられる。
投稿者: | 大久保泰邦 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2007年7月31日 |
公開日: 2007年7月31日