大久保 泰邦
石油生産の状況を見ると、石油ピークは到来しつつあると考えられる。
欧米や中国は石油生産の豊富な経験から石油ピークを実感し、石油ピーク後の世界を想定して国家政策、企業経営を進めている。
しかし、日本は石油生産の経験に乏しく、石油ピークを意識した制作、企業経営となっていない。
米国は、広大な土地を使って、不毛の地からエネルギーを生産し、既存産業から新産業へ転換を試み、世界の覇権を維持しようとしている。
欧州は、多様な国家群の特徴を生かして、相互補完体制を築き、エネルギーの相互依存、基礎科学における知財と施設を共有化し、新たな国際競走に勝ち抜く社会に変貌しようとしている。
中国は、国内の巨大市場をベースにエネルギー・資源の余裕がある間に新しい中国を作り、石油ピーク後は原子力発電を行い、資源を持つもの作り国家として世界に君臨しようとしている。
一方、日本の政府は国際の場での主導権を獲得することに主眼を置き、マスコミは商業主義に陥りメジャーな見解だけで多様な見解を提示せず、学者・研究者はハイテクでエネルギー問題を解決できると思い、政策立案者は石油ピークの恐ろしさを理解していない。
自然エネルギーの開発や省エネルギーという科学政策は一見どの国も同じように見えるが、欧米や中国が目指すゴールは、石油ピーク後の社会づくりである。
石油ピークの影響の大きさと、それに対する対策の手薄さを考えると、日本は崩壊する可能性すらある。
投稿者: | 大久保 泰邦 |
Category: | 論文(WEB学会誌) |
日付: | 2010年8月16日 |
公開日: 2010年8月16日