中田 雅彦
有限な地球の資源を安価に利用できる限界に近づいている。
特に石油資源がそうである。
安価な石油で成り立っている現在の高エネルギー消費社会を低エネルギー社会に早急に構築しなおさなければならない。
ここでは、国内石油消費の約35%を占める運輸部門において、石油消費量と石油依存度を低減する可能性について考察する。対象とする時間枠は2030年とした。
産業部門において具体的な石油消費低減策を検討するためには、先ず将来の絵S基油供給をおおよその精度でもよいから予測することが必要になる。
そこで、入手可能な情報に基づき短中期の供給予測を試みた。
その結果、2−3年後に石油供給不足が発生し、2020年頃には石油生産ピークが発生する可能性が高いと判断された。
2030年には、世界の石油と石油相当の液体燃料は現在の2/3程度に減少すると予測された。
上記の石油供予測に基づき、運輸部門の石油消費低減策を検討した。
石油に替わる得る適切な液体燃料候補は現時点で存在しないので、運輸部門で今までに広く用いられてきた駆動源としての新しい組み合わせに変更して行かねばならないことになる。
すなわち、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、蓄電池電気自動車などの「電気駆動自動車」である。
しかし、液体燃料を完全に電気に置き換えるには、キマの蓄電池の数十倍の能力を持つ高性能蓄電池が必要であり、その開発のためにはまだ相当な年月がかかると言われている。
したがって、当分の間は、蓄電池の性能不足を補うために、この新しい駆動源を新しい交通システムと組み合わせることが必要になろう。
この新駆動源と新交通システムの組み合わせは2030年頃には、努力すれば実現化する可能性はある。しかしながら、数年先に発生すると予測されている石油供給不足には間に合わない。そこで、短期的に燃料消費を低減できる手法をいくつか提案する。
これらの短気、長期対策を併用することと、原子力発電の増強により、目標とする石油消費量を低減する可能性はあるが、官産民の強い意志と連携、努力が必要である。
投稿者: | 中田 雅彦 |
Category: | 研究ノート(WEB学会誌) |
日付: | 2015年5月4日 |
公開日: 2010年2月22日