第3回サロン(9月16日)

緊急報告
福島原発被災後の生涯に渡る放射能汚染と健康影響

 

発表資料

(閲覧にはログインが必要です)

日時:2015年9月16日(水)15:00-17:00
会場:清泉女子大学 1号館3階 133教室
東京都品川区東五反田3-16-21

http://www.seisen-u.ac.jp/access/index.php
(門衛所で、133教室の場所をお尋ねください。
門衛さんが、地図を使って案内をして下さいます。)

 

プログラム

15:00-15:05
主旨説明

15:05-15:35
学ぶほどに深まる疑念、放射能被害、核廃棄物、六カ所村再処理・核燃料サイクル
石井吉徳 元国立環境研究所所長・もったいない学会会長(故人)

15:35-16:30
福島原発事故被災と健康の将来
安藤満 元国立環境研究所総合研究官・日本農村医学研究所客員研究員

16:30-17:00
質疑

終了後懇親会を予定

 


学ぶほどに深まる疑念、放射能被害、核廃棄物、六カ所村再処理・核燃料サイクル

石井吉徳(故人)

要旨
活発な地殻変動列島に住む日本人、人類史最悪の原発事故を起こした。3・11以前の安全神話は崩壊、日本の科学・技術は迷走、根源的な欠陥を露呈した。放射能健康被害、核廃棄物処理、核燃料サイクルなど、国民の不安に「学術」は応えていない。為政者は経済成長に原発は必要と世論無視、川内原発を再稼働した。今では安全神話に「安心神話」が加わった。メディアも迷走する。そして「国民」は情報隠蔽されたままGDP成長に「消費者」として奉仕させられる。真摯に語るべき科学・技術、そして大学は責務を果していないようである。そこで私なりの論点整理をするが、多様な見解、思想が展開される端緒となれば幸いである。


福島原発事故被災と健康の将来

安藤満

要旨
原発被災と再稼働
現在東日本大震災と東京電力(東電)福島第一原子力発電所事故から4年半が経過しています。原発事故による放射性核種の大量放出により、原発付近の大気、土壌、地下水等の環境さらに太平洋の海洋も、ヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134、ストロンチウム-90、トリチウム等各種放射性物質によって著しく汚染されています。徐々に汚染レベル自体は低下してきてはいますが、原発から大気中に放出された放射能汚染の湿性沈着や乾性沈着、さらに汚染水流出によって、今なお環境と食品が汚染されています。原発周辺の土壌は高度の放射性物質汚染に曝される一方、日本の広い範囲が汚染され原発から離れた大気・水中に低濃度の放射性物質が検出されています。

現在、原発事故により汚染地域から福島県内外へ11 万5511人の人々が避難しています。放射能汚染から家族の健康を守るために、双葉町、大熊町、富岡町、浪江町、飯舘村、南相馬市を含む被災地から多数の人が原発から離れた全国各地の非汚染地域へ避難しています。福島県においては原発事故の避難中に震災関連死として多数の方が亡くなられた上に避難中に亡くなる人が今なお増え続けており、復興への取組みと同時に避難を余儀なくされた方々の生活保障、健康維持、生活環境回復の長期的支援が必須となっています。大震災による原発過酷事故の教訓は、過去の幾多の震災同様徐々に忘れ去られる運命にありますが、再び起こると予想される原発事故による被災は防がねばなりません。

『地震と津波そして福島原発事故の避難中に亡くなられた1万5,891人の方々、2,579人の行方不明の方々、震災関連死された3,194人の方々に対し謹んで哀悼の意を捧げます。2015年4月、なお避難生活を余儀なくされている21万9,618人に及ぶ被災者(福島県は県内避難6万9,341人に加え県外避難4万6,170人があり、総勢11万5,511人)の方々が、安心して暮らせる生活環境を一日も早く取り戻せるようお祈り申し上げます。』

全国各地に存在する原発と六ヶ所村再処理工場には大量の使用済み核燃料が存在していますが、原発事故後膨大な量の使用済み核燃料・核廃棄物・放射性汚染物・放射性汚染水が福島原発に日々蓄積されつつあります。2015年3月18日には、福島第一原発の6機に加え、全国各地にある5機の原発の廃炉が決定しました。廃炉には20年以上かかる予定とされていますが、福島原発のメルトダウンした原子炉と原子炉建屋に加え、各地にある原発の原子炉と冷却中の使用済み核燃料の最終処分が将来の日本の世代にとって大きな負担となります。これ以上の使用済み核燃料や核廃棄物の蓄積は許されることではありませんが、現在でも「原発の再稼動」が抜本的対策の無いまま急がれています。

日本列島は四大プレート境界に存在するため、世界でも有数の地震と火山被害の多発する国ですが、大震災以降地震・火山活動が活発化しています(小出 2011:古儀 2015)。その日本における政府の拙速な原発再稼動への危惧と不安が、再稼働反対の世論を形成し「再稼働差し止めの訴訟」として全国各地に広がっています。このような状況の中にある一方で、政府は原発過酷事故発生時の対策も不明確なまま原発輸出推進さえ図っています。

さらに政府は福島復興指針を改訂し、2017年3月までに福島県内の避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示を解除し、2018年3月には精神的損害補償も終了することを目指しています。2015年6月16日福島県はこの方針に沿った対応を打ち出しています。詳細は後ほど述べますが、避難指示されている地域の放射性物質の汚染状況と地域社会の現状は、住民が安心して暮らせる環境としては厳し過ぎる状況で、多くの避難している住民も強制的避難解除には反対しています。

再稼動への動きが最も早いのは、鹿児島県薩摩川内市に隣接する九州電力(九電)川内原発です。九電は2015年7月10日現在川内原発1号機の原子炉に核燃料を装着する作業を終えました。九電は新規制基準に基づいて全国で初めてとなる8月中旬の再稼働を目指しています。原子力規制委員会は既に2014年7月16日九電川内原発1,2号機について、「新規制基準に適合している」とする審査書案を定例会で了承してます。適合審査を受け鹿児島県知事は「事故が起きても…避難の必要がない。もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と断言し、再稼動に同意しています。

しかし審査書案や知事の言葉とは裏腹に、同年11月2日の日本火山学会の講演では、巨大噴火の予測について「現代火山学はほとんど知見を持っていない」「規制委は監視を強化すれば前兆の把握は可能と判断したが楽観的過ぎる」と指摘され、噴火の数年前に予測することは不可能との見方が示されています。

戦後最悪の火山噴火被害となり、死者57名を数えた2014年9月27日の御嶽山の突然の噴火災害を考えると、火山噴火の予測が不可能であることが推し量れます。

図は気象庁福岡管区気象台・火山監視情報センターによる西日本火山帯の霧島火山帯に存在する活火山です(http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/volcanofk.html

九州南部は過去から現在に至るまで火山活動が活発です。巨大な姶良カルデラに位置する桜島は、1914年溶岩流により大隅半島との海峡が埋められ陸続きになる程の巨大噴火を起こしています。現在は1955年10月以降ほぼ60年間噴火が継続し入山規制されています。

九州には過去に超巨大噴火(別名カルデラ噴火)を起こし、現在カルデラが形成されている地域が複数存在します。南より鬼界カルデラ(薩摩硫黄島は外輪山)、阿多カルデラ(開聞岳は外輪山)、姶良カルデラ(桜島は外輪山)、加久藤-小林カルデラ(霧島連山は外輪山)、阿蘇カルデラと連続しています。現在活火山がカルデラの外輪山として存在しています。このうち鹿児島県薩摩川内市の九電川内原発に近い九州南部に存在し、過去に超巨大噴火を起したカルデラは、加久藤-小林カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラです。

201509saloon_image

気象庁福岡管区気象台・火山監視情報センター:霧島火山帯に存在する活火山(http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/volcanofk.html

2015年5月29日にマグマ水蒸気噴火をし、火砕流が襲い全島避難した口之永良部島も、九州南部の霧島火山帯に存在しています。2011年に噴火した活火山の霧島新燃岳を含む加久藤-小林カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラの巨大カルデラを形成した過去の噴火では、九電川内原発敷地内に火砕流が到達しています(古儀、2015)。
超巨大噴火は文明を消滅させるほどの破壊力を持っており、7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火では、9500年前からの日本最古・最大の定住型縄文遺跡である上野原遺跡等に残る九州の縄文文化を消滅させています。鹿児島県の上野原遺跡は古い縄文遺跡としては保存状態の良い遺跡ですが、過去に訪れた時には超巨大噴火の歴史を知らず、遺跡に佇みながら「何故これだけの遺跡群が放棄されたのか?」不思議さを覚えた記憶があります。
田中俊一委員長は「基準への適合は審査したが、絶対に安全だとは私は申し上げません。」との意見を表明しています。しかし巨大噴火時には被災する恐れの強い川内原発については全く拙速な再稼動と考えられます。
感受性の高いヒトの健康への深刻なリスクとして放射線や放射性物質は、多種の固形がんや非固形がんの白血病(白血球のがん)の原因であることが知られています。がん発症やがん死亡率に関する最も重要な疫学資料として、広島・長崎の原爆被爆生存者の生涯に渡る追跡調査(LSS)があります。さらに最近の研究として、チェルノブイリ原発事故により放射線と放射性物質の高濃度曝露を受けた60万人以上のチェルノブイリ原発作業員について、白血病発生率が倍加していることが報告されています。
放射線被曝量と白血病発生率・死亡率や固形がん発生率・死亡率の間には、直線的相関関係があると報告されています。福島の放射能汚染地域には多くの乳幼児、児童、母親が居住していますので、生涯に渡る継続的健康診断と早期発見、早期治療の徹底が必須です。
このような現状の中、東電と国の責任として最も急ぐべきことは、原発事故以来の被曝に対する恐れを抱き避難を余儀なくされている自主避難者を含む多数の住民の生活の補償、生活再建、健康管理、適切な医療の保証です。さらに福島第1原発の過酷事故の検証と再発防止策の確定、安全な廃炉処理過程の迅速化、原発内外作業者の作業の安全確保と健康の保障、再度の事故に備えた原発周辺地域住民の安全策の確定、汚染された生活環境の回復・保全であり、そこに全力を傾注し包括的安全環境対策を継続的に実施することが求められています。

 

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